2002 Fiscal Year Annual Research Report
放射性降下物を用いた釧路湿原流入河川の流域土砂動態に関する研究
Project/Area Number |
02J00214
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
水垣 滋 北海道大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | セシウム-137(^<137>Cs) / 鉛-210(^<210>Pb) / 流域土砂動態 / 細粒土砂 / 釧路湿原 / 土砂堆積 / 侵食 / 河床低下 |
Research Abstract |
本研究の目的は、湿原における過去約100年間の土砂堆積実態を明らかにし、1960年代を境に激変した流域の土地利用が土砂動態に与える影響を検討することである。本年度は、既存情報・資料の収集及び解析と現地踏査に基づく研究対象流域の基礎情報収集及び確認を実施した。 【既存データの解析】まず、1980年以降久著呂川下流で観測された水位・流量データ(国土交通省北海道開発局の観測データ)を用いて久著呂川の流況を整理し、1995年9月〜1996年8月に観測された流域全体をカバーする4定点における水位・濁度データを用いて、セディメントバジェット(土砂収支)及び流量・浮流砂濃度解析を行った。その結果、秋季の降雨出水時とともに春季の融雪出水時に土砂が湿原内へ氾濫堆積していることが示唆され、とくに中流域において大量に土砂が供給されていることが分かった。流量解析から湿原への濁水氾濫は毎年数回起きていることが示唆された。 【現地調査】中流域の河床浸食及び氾濫堆積状況を確認するため、現地踏査を実施し、同時に浸食量モニタリング(浸食ピンの打設及び地形測量)、堆積土砂の採取を行った。これまでの測量結果と併せて河床低下量を推定すると、最大で年間1mも河床が低下していることが明らかとなった。久著呂川流域の表層地質は、上流域は火山灰及び凝灰岩質岩石で、中流域は未固結の氾濫原堆積物で構成されており、露出した裸地斜面から凍結融解によって容易に土砂が生産されることが確認された。 【分析】土砂堆積・浸食量を^<137>Cs及び^<210>Pbを用いて推定するために、北海道大学アイソトープ総合センターにおいて土砂試料中の^<137>Cs及び^<210>Pb濃度をγ線スペクトロメトリーによって測定した。また、土砂試料の粒度分析を実施するための前処理として、土砂試料の含有有機物を過酸化水素処理によって除去した。^<137>Cs及び^<210>Pb分析は現在進行中であり、粒度分析は来年度実施することとする。
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