2002 Fiscal Year Annual Research Report
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02J00353
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
櫻木 まゆみ 北海道大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | エゾシカ / 季節移動 / 生息環境選択 / 移動個体と定住個体 / ラジオテレメトリー / 地理情報システム(GIS) / 野生動物管理 / ランドスケープ |
Research Abstract |
1.9個体について日中の追跡(日中追跡)と24時間を通して2時間おきに行った追跡(24時間追跡)によって評価したハビタット利用の比較を行った。8個体のハビタット利用は日中追跡と24時間追跡の間で差はなく、日中追跡が24時間を通したハビタット利用を表していると考えられた。しかしながら、1個体は夜間に牧草地を利用していたことから、牧草地を利用する個体については日中追跡だけでは行動圏が過小評価される可能性が考えられた。 2.追跡データと地理情報システム(GIS)を用いて、ランドスケープスケールにおけるエゾシカの夏と冬の生息環境選択性を明らかにした。エゾシカの冬の分布は積雪と針葉樹林や針広混交林の植生のカバーに制限されており、生息適地の量と分布は夏に較べて冬にきわめて限られていることが示された。この生息環境の季節的な変化が、北海道東部においてエゾシカが分布を拡大していく過程において、夏の行動圏から冬の行動圏への移動につながったと考えられた。 3.糞中窒素含有量の分析から、移動個体が移動によって夏に定住個体よりも高質の餌を獲得するという仮設を検証した。高標高の夏の行動圏に移動する個体は定住個体よりも高質の餌を獲得していることが示された。しかしながら、低標高の夏の行動圏に移動する個体は必ずしも定住個体よりも高質の餌を獲得しているわけではなかった。近年の個体数管理によるメスジカへの高い捕獲圧により、低標高に移動する個体が牧草地を利用できなくなってきている可能性が考えられた。 4.10個体の数年にわたる追跡から、エゾシカのメスが移動経路や季節的行動圏に高い執着性を示すことがわかった。また一組の母親とその仔の追跡から、仔が母親とのはじめての移動から移動経路を学習する能力を持つこと、伝統的な移動経路を利用しつづけることが考えられた。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 二村一男, 中島皇, 馬渡和則, 櫻木まゆみ, 伊吾田宏正: "北海道演習林(標茶区)におけるエゾシカのテレメトリー調査(予報)"京都大学大学院農学研究科附属演習林 演習林試験研究年報告. 1998. 9-15 (2000)
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[Publications] Sakuragi M., Igota, H., Uno H., Kaji K., Kaneko M., Akamatsu R., Maekawa K.: "Comparison of diurnal and 24-hour sampling of habitat use by female sika deer"Mammal Study. 27. 101-105 (2002)
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[Publications] 伊吾田宏正, 早稲田宏一, 櫻木まゆみ, 宇野裕之, 梶光一, 金子正美, 赤松里香, 前川光司: "GPS首輪の評価とエゾシカへの適用"哺乳類科学. 42(2). 113-121 (2002)
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[Publications] Sakuragi M., Igota, H., Uno H., Kaji K., Kaneko M., Akamatsu R., Maekawa K.: "Seasonal habitat selection of an expanding sika deer population in eastern Hokkaido, Japan"Wildlife Biology. (印刷中).
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[Publications] Sakuragi M., Igota, H., Uno H., Kaji K., Kaneko M., Akamatsu R., Maekawa K.: "Benefit of migration in a female sika deer population in eastern Hokkaido, Japan"Ecological Research. 18(4)(印刷中). (2003)