2003 Fiscal Year Annual Research Report
中国准河流域における梅雨期の降水システムの発達機構に関する研究
Project/Area Number |
02J00491
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
前坂 剛 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 梅雨前線 / メソスケール降水システム / ドップラーレーダー / メソスケール数値モデル / 中国大陸 / アジアモンスーン |
Research Abstract |
今年度は,昨年度からの研究を継続し,GAME/HUBEX観測計画で観測された,中国大陸上の梅雨前線内の降水システムを,ドップラーレーダーデータ・客観解析データ・衛星データ・メソスケール数値シミュレーションを用いて解析し,以下に示す結果をJournal of Meteorological Society of Japanに投稿した. ●GAME/HUBEX観測期間中,亜熱帯気団内に存在する温度経度の弱い梅雨前線(ISAタイプ),寒冷前線と併合した梅雨前線(MCFタイプ)が観測され,それぞれの梅雨前線内の降水システムの構造と維持過程を示した. ●降水形成と降水システムの構造の観点から,ISAタイプの梅雨前線とMCFタイプの梅雨前線を比較した.ドップラーレーダー解析と熱と水蒸気の収支解析から,MCFタイプの梅雨前線における降水の形成高度(4-5km)の方がISAタイプの梅雨前線における降水の形成高度(2km)にくらべ高いという傾向が示された.この違いは梅雨前線の下層に流入する空気塊の相対湿度の違いによるものと考えられ,MCFタイプの梅雨前線での持ち上げ凝結高度(1km)はISAタイプでの場合(200m)に比べて高かった.さらに,持ち上げ凝結高度の違いは降水域の広がりやメソα低気圧の生成メカニズムに違いをもたらした. ●本研究は中国大陸上の梅雨前線帯におけるメソスケール降水過程が梅雨前線に南側から流入する空気の相対湿度に依存することを示し,その相対湿度は総観場の状況と地表面過程により支配されているという仮説を示した. また,変分法を用いた高精度マルチドップラーレーダー解析プログラムの開発行った.このプログラムはMPI(Message Passing Interface)を用いた並列計算に対応しており,並列計算機を用いることにより,C-bandレーダーでカバーされるような広い領域(半径約120km)を短時間で解析でき,このプログラムをGAME/HUBEX観測データに適用した.
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