2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J00557
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉田 俊一 北海道大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 磁性 / スピンアイス / バイロクロア型酸化物 / モンテカルロシミュレーション / クラスター変分法 / 経路確率法 |
Research Abstract |
パイロクロア型酸化物、特に、スピンアイスと呼ばれる系について以下の研究を行った。 1、双極子スピンアイス模型の[110]磁場中での振舞い スピンアイス物質Dy_2Ti_2O_7に関して実験で報告されている[110]磁場中での熱力学的異常の解明を目指し、双極子スピンアイス模型の研究を行った。まず、双極子スピンアイス模型の基底状態をEwald法を用い解析した。その結果、[110]磁場中においては長距離力である双極子相互作用によってQ=X構造と呼ばれるスピン配位が基底状態となることを証明することに成功した。この基底状態は中性子散乱実験で示唆されていたものと同じものであった。更に、モンテカルロシミュレーションを行い、このQ=X構造相への相転移が起こることを示し、温度磁場相図を完成させた。なお、この結果はJournal of the Physical Society of Japanに掲載され、注目論文(Letters of Editors' Choice)に選ばれた。 2、最近接スピンアイス模型の動的帯磁率x(ω) スピンアイス物質Dy_2Ti_2O_7、Ho_2Ti_2O_7では、動的帯磁率はDavidson-Cole型の緩和時間分布を示すことが実験で解明されている。このDavidson-Cole型の緩和の起源を解明するために、スピンアイスのもっとも単純なモデルである最近接スピンアイス模型の動的振る舞いを解析した。用いた手法はクラスター変分法の動的な拡張である経路確率法である。パイロクロア格子の四面体中の相関までを正しく取り扱った経路確率法の計算をおこない、系の緩和時間と帯磁率の解析的に求めることに成功した。得られた結果は単純なDebye型の緩和を示し、実験のDavidson-Cole型の緩和を再現するにはいたらなかった。この実験との乖離の原因としては、(i)経路確率法を適用するにあたって用いた近似が不十分なものだったこと、(ii)双極子相互作用を考慮しなかったことの2つが考えられる。以上を2004年秋の物理学会で発表した。
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Research Products
(1 results)