2003 Fiscal Year Annual Research Report
食物網体系の定量比較による水田生態系の多様性維持機構の解明とその保全
Project/Area Number |
02J00685
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
平井 利明 愛媛大学, 農学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | タガメ / 両生類 / 爬虫類 / 水田生態系 / 食物網 / 生物多様性 / 保全生物学 |
Research Abstract |
これまでの兵庫県佐用町における調査で得られた知見を再検証するため、大阪府能勢町で爬虫・両生類とタガメに関する諸調査を行った。まず、能勢町内及び隣接する地域におけるタガメの分布を調べた結果、過去に分布の記録がある地点でもタガメを発見することができず、急速に分布域が縮小し、今では局所的にしか分布していないことがわかった。能勢町におけるタガメの生息個体数は、多く見積もっても佐用町の約1/2であった。能勢町におけるタガメの餌構成は、佐用町と同様で、5〜6月はアマガエル成体(能勢町66.1%、佐用町72.0%)、7〜9月はトノサマガエル幼体(能勢町35.3%、佐用町43.4%)が優占していた。アマガエル成体とトノサマガエル幼体の能勢町における生息個体数は、タガメがすでに絶滅した地域より多いものの、佐用町より少なかった。また、タガメと同様に餌をカエル類に全面的に依存しているシマヘビとヤマカガシの生息個体数も、能勢町ではタガメがすでに絶滅した地域より多いものの、佐用町より少なかった。次に、タガメの衰退原因と言われる夜間照明(水銀灯)の影響について調査したところ、肥満度指数(体重g/体長mm^3×10^5)は水銀灯に飛来した個体(平均値±標準誤差=1.68±0.01)よりも、水田に残っていた個体(2.28±0.03)の方が有意に高いことがわかった。この結果は、空腹の個体が水田から移動分散して、満腹の個体は水田にとどまっていることを示しており、タガメが機械的に水銀灯に引き寄せられているのではないことを示唆している。以上の結果から、タガメの水田からの移動分散は餌条件に依存しており、水田でタガメ個体群を存続させるためには、主要餌種であるカエル類を高密度に保全管理することが重要と考えられた。
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