2004 Fiscal Year Annual Research Report
食物網体系の定量比較による水田生態系の多様性維持機構の解明とその保全
Project/Area Number |
02J00685
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
平井 利明 愛媛大学, 農学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | カエル類 / タガメ / 爬虫・両生類 / 昆虫食者 / 食性調査 / 食物連鎖 / 水田生態系保全 / ただの虫 |
Research Abstract |
絶滅危惧種タガメの存続条件を明らかにするため、下記の諸調査を行った。まず、カエル類の密度とタガメの餌構成や生息密度との関係について調査した結果、タガメの夏期の餌構成中では、トノサマガエル幼体の密度の低下とともにスジエビや落下昆虫などのカエル以外の餌種の比重が高まることや、さらにトノサマガエル幼体の密度の低下に伴って水田におけるタガメの密度は低下する一方で、夜間照明に飛来するタガメの個体数は増加することが分かった。夜間照明に飛来したタガメの体重は、水田に留まっていた個体よりも有意に軽かったことから、水田におけるタガメの生息密度は餌密度によって制限されていると考えられた。以上の結果は、タガメがカエル類の密度に依存的であることを改めて示すものであり、タガメを存続させるには主食のカエル類を高密度で保全管理することが重要であると考えられた。次に、水田生態系における昆虫食者としてカエル類と同じ栄養段階に属するイモリ、ニホンカナヘビ、スジブトハシリグモの密度を比較した結果、いずれも、タガメの残る地域の方がタガメの絶滅した地域の水田よりも高かった。栄養段階が同じで、生息環境が異なるこれらの昆虫食者の密度の変異がカエル類のものと一致していたことから、昆虫食者の密度が節足動物の現存量によって規定されている可能性が示唆された。したがって、タガメ存続にとって不可欠なカエル類の高密度での維持管理には、カエル類にとって餌資源となりうる「益虫」・「害虫」・「ただの虫」を包括的に保護することが重要であると考えられた。
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Research Products
(3 results)