2002 Fiscal Year Annual Research Report
カントにおける理性の統一の問題-『オプス・ポストゥムム』を視野に入れ
Project/Area Number |
02J00743
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内田 浩明 京都大学, 総合人間学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | カント / 超越論的哲学 / 理性の統一 / オプス・ポストゥムム / 遺稿 / 形而上学 / ヴォルフ |
Research Abstract |
報告者は当年の特別奨励費研究の成果を、まず「日本倫理学会」第53回大会において「カント最晩年の超越論的哲学」という題目で発表し、その原稿を同学会の機関誌『倫理学年報』52集に投稿するというかたちで公表した。年次計画との関連で言えば、当該発表論文では「批判期」の著作と『オプス・ポストゥムム』(以下『遺稿』と記す)の「超越論的哲学」の規定に関する比較考察を行った。この論文において報告者は、カントが主著『純粋理性批判』では「超越論的哲学」を理論哲学・思弁哲学に限定していたが、『遺稿』では実践哲学・道徳哲学をも含めた「超越論的哲学」を構想した点を明らかにした。我が国ではカントの『遺稿』研究に携わる研究者自体、少ないが、とりわけ後期の束に関しては殆と研究されていない。このような状況の中、「超越論的哲学」というカントの根本概念を「理論理性と実践理性の統一」という観点から論じた点が当該発表論文の成果であり、特色である。 またカントの多くの著作を繙けば分かるように、彼の哲学的関心は何よりも「形而上学」に向けられていた。そこで報告者は、当年の第二の研究成果として「カントにおける形而上学の問題-ヴォルフの形而上学とカントの実践的・定説的形而上学に定位して」という仕方で公表した。当該論文は、そのタイトル通り、カント哲学における形而上学の問題を、日本では著しく研究が遅れているヴォルフとの連関から論じるものである。報告者の研究課題との関係から言えば、カント哲学における理論理性と実践理性の関係性に着目しつつ、カントがヴォルフの形而上学を「理論的・独断的形而上学」として批判する所以を明らかにすると共に、カントが「実践的・定説的形而上学」という彼独自の形而上学の在り方を提示したさまを、当該論文において彫琢した。
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Research Products
(2 results)