2003 Fiscal Year Annual Research Report
カントにおける理性の統一の問題-『オプス・ポストゥムム』を視野に入れ
Project/Area Number |
02J00743
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内田 浩明 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | カント / 超越論的哲学 / 理性の統一 / オプス・ポストゥムム / 遺稿 / 存在論 / ヴォルフ / 自己定立論 |
Research Abstract |
報告者は、昨年に引き続き、科学研究費補助金の大部分を書籍購入費として活用し、本年度も研究を遂行してきた。その最大の成果は、「存在論としてのカントの超越論的哲学-ヴォルフ以来の存在論との比較考察を通じて」の『立命館哲学』第15集における論文掲載である。当該稿の目的は、カントが主著『純粋理性批判』や『形而上学講義』で「超越論的哲学」を「存在論」と言っていることに着目し、ヴォルフやバウムガルテン、ランベルト、テーテンスらの影響にありながら、彼が独自の超越論的哲学を築き上げようとした点を証示することにある。特に「理論理性」と「実践理性」の「統一」という報告者の研究課題から言えば、カントが「批判期」において「理論(思弁)哲学」に「超越論的哲学」を限定したのは、「存在論」を「理論哲学」とするランベルトやテーテンスらの影響によるものであること、しかし『オプス・ポストゥムム』でカントはこの考えから脱却し、「実践(道徳)哲学」を含む「超越論的哲学」を構想したことを開陳した。 また報告者は、当年度中に「『オプス・ポストゥムム』の自己定立論-『第一批判』の自我論との比較考察を通じて」というテーマで「カント研究会」第180回例会(2004年1月25日 於 明治学院大学白金校舎)において口頭発表を行った。当発表では、「私は存在するich bin(sum)」と「私は現実存在するich existiere(existo)」が『オプス・ポストゥムム』、で初めて明確に区別されたという独自の視点に基づき、カントの「自己定立論」を自我の「論理的活動」と「形而上学的活動」の二側面から解明した。カント研究者だけからなり、高度な専門的知識が要求される「カント研究会」で課題に即した研究発表を行えたのは、本補助金で多くの文献を購入できたからに他ならない。
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Research Products
(1 results)