2004 Fiscal Year Annual Research Report
カントにおける理性の統一の問題-『オプス・ポストゥムム』を視野に入れ
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02J00743
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内田 浩明 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | カント / 『オプス・ポストゥムム』 / 『遺稿』 / 理性の統一 / ドイツ観念論 / シェリング |
Research Abstract |
報告者は、昨年度に引き続き、科学研究費補助金の大部分を書籍購入費として活用し、当年度も研究課題に即して研究を遂行してきた。その成果は、既に監訳者の手に渡り近刊される翻訳「ドイツ観念論におけるシェリング」(W.G.ヤーコプス著)である。当年度の研究計画書において、報告者は、ドイツ観念論(とりわけシェリング)の哲学との関連を視野に入れたうえで、カントの思想究明を行うという趣旨の計画を立てた。上記の翻訳は、タイトルからも分かるように、確かにシェリングの研究論文であるが、その内実は、まさにカントとの関係を中心に据えつつ、シェリング哲学の解釈を目論むものとなっており、報告者の本年度の研究計画に即したものである。 また、研究課題「カントにおける理性の統一の問題-『オプス・ポストゥムム』を視野に入れ」と今年度の研究計画との関連で言えば、報告者は『オプス・ポストゥムム』を精読し、カント哲学における難問の一つとされる「物自体」が『オプス・ポストゥムム』の多くの箇所で「批判期」には必ずしも多くない「思考物(Gedankendingあるいはens rationis)」という言い回しで以って表現されていることを発見した。これを報告者は「物自体」に対して否定的な態度を採りつつ「理論哲学と実践哲学の統一」を図ろうとしたフィヒテやシェリングといったドイツ観念の哲学者がカントに与えた影響と考え研究を進めた。本研究費を活用し、調べたところ、国内ではカントの「遺稿」とドイツ観念論の関係について詳細に論じた研究はなく、欧米でも近年の研究では上述の観点から「遺稿」における「物自体」を主題的に扱っているものはなかった。層の厚いカント研究において上のような解釈が行われていないかどうか、更に慎重を期し調べ上げるとの意図から、上述の解釈を公表しなかったが、当年度は以上のような形で課題に忠実に研究を行った。
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Research Products
(1 results)