2002 Fiscal Year Annual Research Report
近代性と感覚変容にかんする文化社会学的研究―近代日本における社会の不眠化をめぐって―
Project/Area Number |
02J00780
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近森 高明 京都大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | モダニティ / 近代日本 / 都市 / 夜間 / 感覚 |
Research Abstract |
平成14年度の研究によって得られた新たな知見および研究の進行状況は、以下のようである。 1 モダニティ理論の検討と批判的視点の構築 W.ベンヤミンを中心とするモダニティ理論による都市論を整理・検討し、それら都市論の読解において従来は無視されてきた「無意識」ないし「無気味なもの」の概念にかかわる側面について考察した。具体的には、『パサージュ論』にたいする従来の「遊歩者」を中心とする読解に批判をくわえ、そこでとりこぼされている視点、すなわち「迷宮」「夢」「夜」といった鍵語に集約される都市イメージの理論的含意を照らし出した(論文「他者と迷宮」)。ここで得られた新たな視点は、本研究の理論的視座の中心的モティーフとして位置づけることができる。 2 身体表象における<近代的なるもの>の考察 大正期における「神経衰弱」の表象の二つの代表的範型として、佐藤春夫と谷崎潤一郎による文学的描写を事例としながら、そこにおいて自我と身体(の関係)がどのように想像されているかを考察した。二つの表象類型を、E.デュルケームの『自殺論』における個人形態論との比較、両者の感覚的描写の対比、さらに大正期における文明観の変容との関係といった異なる視点から検討することを通じて、同時代の<近代的なるもの>をめぐる集合的想像の布置を浮かびあがらせた(論文「乾いた神経、濡れた神経」)。この考察は、本研究の各論の一部として位置づけることができる。 3 都市照明にかんする歴史資料の収集・整理 「夜間」という社会的時間の開発過程の物質的側面として「都市照明」をとりあげ、明治期から昭和初期にかけての歴史資料を収集・整理した。ここで得られた知見は、平成15年度の研究で独立した論文としてまとめられる予定である。
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Research Products
(2 results)