2003 Fiscal Year Annual Research Report
近代性と感覚変容にかんする文化社会学的研究――近代日本における社会の不眠化をめぐって――
Project/Area Number |
02J00780
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近森 高明 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 近代性 / 感覚変容 / 文化社会学 / 都市 / 夜間 / 照明 |
Research Abstract |
平成15年度の研究によって得られた新たな知見および研究の進行状況は、以下の通りである。 1 W.ベンヤミンの都市論の批判的読解 従来の都市論において前提されてきた「観察者」としての歩行者像にたいして、「陶酔する遊歩者」という都市の読み手像の理論的射程を考察した。具体的には、W.ベンヤミン『パサージュ論』の断片群P「パリの街路」にある「街路名」の魅力にかんする記述を手がかりに、ベンヤミンの言語論と記憶論に通底する潜在的な思考のラインを再構成することにより、じっさいには書かれなかった「街路名の理論」のスケッチを試みた(論文「街路名の理論のために」)。ここで得られた新たな知見は、本研究の理論的視座の中心的モティーフとして位置づけることができる。 2 都市照明にかんする歴史資料の収集・整理 前年度に引き続き、「夜間」という社会的時間の開発過程の物質的側面として「都市照明」をとりあげ、明治期から昭和初期にかけての歴史資料を収集・整理した。とりわけ国会図書館と東京電力「電気の史料館」において貴重な資料を得ることができた。 3 街路照明の管理化過程にかんする考察 「夜間」の開発過程の重要な一側面として、1920年代における街路照明のシステム化という主題について考察した。それまでの街灯は、照明の機能、器具の所有・管理形態、さらに物理的形態など、あらゆる側面で無統制な状況であったが、1920年代において、均質的かつ画一的な都市照明システムの必要性が、行政組織や科学者たちによって提唱されるようになる。その過程を詳細に検討することにより、照明の管理化は行政や科学の主導によって一方的に推進されたわけではなく、一般市民や事業者などの利害や思惑との一致や齟齬を生みだしながら、矛盾をはらみつつ進展していったことが明らかとなった(論文「<管理された光>の誕生」〔未発表〕)。この考察は、本研究の各論の一部として位置づけることができる。
|
Research Products
(1 results)