2004 Fiscal Year Annual Research Report
近代性と感覚変容にかんする文化社会学的研究--近代日本における社会の不眠化をめぐって--
Project/Area Number |
02J00780
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近森 高明 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 近代性 / 感覚変容 / 文化社会学 / 都市 / 夜間 / 照明 |
Research Abstract |
平成16年度の研究によって得られた新たな知見および成果は、以下の通りである。 1 W.ベンヤミンの都市論の批判的読解 前年度に引き続き、従来の都市論に前提されてきた「観察者」としての歩行者像にたいして、「陶酔者」としての遊歩者の都市経験の理論的射程を考察した。具体的には、W.ベンヤミン『パサージュ論』の断片群Tにある「ガス灯」と、断片群Zにある「人形」をめぐる記述を手がかりに、過渡期のテクノロジーと無意志的記憶との関連、および商品フェティシズム論とフロイト的な「死の欲動」との関連を照らしだした(論文「<ガス灯>の神話学」〔未発表〕、論文「ベンヤミンにおける<娼婦>と<人形>のモティーフ」)。また同様の問題意識から、M.ド・セルトーの都市論を精神分析的な観点から読み直す試みをおこなった(論文「「都市を歩く」再考」)。これらにより得られた新たな知見は、本研究の理論的視座の中心的モティーフとして位置づけることができる。 2 都市照明にかんする歴史資料の収集・整理 前年度に引き続き、「夜間」という社会的時間の開発過程の物質的側面として都市照明をとりあげ、日本の明治期から昭和初期にかけて、また欧米の19世紀から20世紀初頭にかけての歴史資料を収集・整理した。とりわけアメリカ合衆国のニューヨーク市立図書館では、貴重な調査結果が得られた。 3 公共照明および商業照明にかんする考察 都市の「夜間」の開発過程の重要な側面として、都市照明の発達プロセスを対象とする経験的研究をおこなった。まず公共照明という面では、前年度から継続して、1920年代の日本における街路照明のシステム化という主題について考察した(論文「街路空間における<光>の管理化」)。つぎに商業照明にかんしては、ガスや電気を利用した広告照明やショーウィンドーの発達過程について検討をおこなった。これらの考察は、本研究の各論の一部として位置づけることができる。
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Research Products
(3 results)