2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J00791
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 牧子 (本井 牧子) 京都大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 地蔵菩薩 / 十王経 / 春日権現験記絵 / 地獄 / 地蔵菩薩像霊験記 |
Research Abstract |
1.『預修十王経』の諸本整理 『預修十王経』は、七字四句の讃の有無により、甲・乙の二種類に分類できる。本年は特に讃を持たない甲類に関して、敦煌に伝存する写本の本文比較を行い、その系統を整理した。特に、追善についての記述を一部欠く本(甲類a)が現存することに着目し、この甲類aと、現在最も一般的な甲類本文である甲類b、さらに乙類の三種をを比べることで、甲類aが最も古態を残すことが明らかになった。それにより、預修を中心に説く本文が先に成立し、そこに追善に関する記述を増補することで現在のような形(甲類b)に整えられていったという小南一郎説を裏付けることができた。また、乙類は、甲類bから派生したものではなく、甲類aから派生したものであるということも判明した。 2.『春日権現験記絵』の春日野地獄-常謹撰『地蔵菩薩像霊験記』との関連- 春日明神の霊験を描いた『春日権現験記絵』には、第三殿の本地である地蔵菩薩が多く登場する。その中で巻十六-2璋円僧都の話では、春日明神が設ける春日野地獄に地蔵菩薩があらわれて、罪人の苦患を救うとされる。この春日野地獄の背景には、宋の常謹撰『地蔵菩薩像霊験記』第十六話を考えることができる。この話に描かれる「福舎」という建物は、地獄に隣接し、地蔵菩薩の信者がそこに迎えられるという浄土的な場所である。『春日権現験記絵』は、この「福舎」を地獄に作り替え、春日明神の利益を語る際に利用しているのである。
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Research Products
(1 results)