2002 Fiscal Year Annual Research Report
ジョルジュ・バタイユとモーリス・ブランショにおける「対話」を通した思想の発展
Project/Area Number |
02J00793
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
濱野 耕一郎 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | バタイユ / ブランショ / 政治 / 不安から言語へ / 内的経験 |
Research Abstract |
本年度は、1930年代におけるモーリス・ブランショの政治論文、及び40年代初頭に書かれた「不安から言語へ」の分析に着手した。前者に関しては、論文の収集、分析をフランス、パリで行ったが、未だその全貌は掴み切れていない状況である。あと半年ほど論文の収集と読解を進め、論文の収録された雑誌全体の論調の中で、今一度分析を深化させる必要がある。 「不安から言語へ」については、バタイユのテクスト『内的体験』との関連を明らかにしようと努めた。ブランショは「不安から言語へ」において、作家を二重の要請に引き裂かれた存在として描き出すが、そうした状況は、『内的体験』を執筆するバタイユ像とぴったり合致している。バタイユが追求する自己喪失の体験(内的体験)は、一方で書くことの放棄を迫る。書くことが、体験の条件である企図(意志)の放棄と背馳するからである。だが他方、体験は書くことを要請せずにはおかない。体験が幸運の結果として与えられるのは、言語、企図(意志)を維持し、狂気から逃れている限りだからである。ブランショが作家を、「同じ苦痛の中に歩くことの禁止と義務とを見い出すような半身不髄者」(「不安から言語へ」)になぞらえるのは偶然ではない。ブランショは、バタイユが現実に直面した矛盾の中に、作家とエクリチュールの条件を見い出しているのである。 本年度は、テクストの読解、収集、分析といった基本的作業を押し進めることに専心したため、具体的な研究実績は残していない。ただし、「不安から言語へ」と『内的体験』の関係を素描した学位論文が、来年度(あるいは再来年度)に出版される見通しとなっている。来年度は、この出版の準備を進めると同時に、ブランショの政治論文の分析を引き続き行い、バタイユの政治論文との対照研究に着手する予定である。
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Research Products
(1 results)