2002 Fiscal Year Annual Research Report
碑刻史料を主な材料とする中国元代の文化政策の総合的研究
Project/Area Number |
02J00804
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
櫻井 智美 京都大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 碑刻 / 拓本 / 石刻 / 文化政策 |
Research Abstract |
本年度は碑刻史料の保存状況の把握を中心に研究を進めた。国内については、中国関係の石刻拓本を多数所蔵する東洋文庫の『東洋文庫所蔵中国石刻拓本目録』が出版されたため、それを中心に整理を進めた。その他の拓本所蔵機関については、石刻拓本の保存性と文物的価値に照らして、一般公開をおこなっていない所蔵機関が多いことがわかった。海外については、中国国家図書館と上海図書館で、拓本・拓片の保存や公開状況を調査した。前者の拓本は順次増加中であり、多くがマイクロや実物を調査可能である。後者には前者に保存されない系統の拓本・拓片が十五万件程所有されるが、その対外公開は今のところ計画されていない。また、図書館以外の各地文物局における所蔵状況を把握するため、杭州・寧波・南京の各所蔵単位で実地調査を行ない、現存の関連碑刻について仮目録を作成した。中国側との権利問題が解決できれば公表したい。これらの調査過程を通じて明らかになった個人研究による閲覧の可能性に鑑みて、今後の作業は、閲覧可能な関連拓本の実地調査、及び典籍資料所収石刻のデータベース化が中心となる。 一方、元代の文化政策と関わる問題を追究するために、まず「日本における最近の元代史研究-文化政策をめぐる研究を中心に-」を発表し、「文化政策」研究の有用性を提唱した。また、文化政策実現のための機関として儒学提挙司を採り上げ、その役割について論文「元代の儒学提挙司-江浙行省を中心として-」を作成した。さらに、8月12日〜14日にかけては、南京で開かれた元代政治与社会国際学術研討会に参加し、元代の文化政策の一つ、科擧に直接関わる『禮部韻略』について「『禮部韻略』與元代科挙」の報告を行った。その発表内容を同名の中国語の論文としてまとめ提出した。これらの論文を通じて、文化政策研究への足がかりができ、また、本年度の関連文献研究の成果を公開できた。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 櫻井 智美: "元代の儒学提挙司-江浙儒学提挙を中心に-"東洋史研究. 第61巻第3号. 55-84 (2002)
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[Publications] 櫻井 智美: "日本における最近の元代史研究-文化政策をめぐる研究を中心に-"中国史学. 第13巻. 123-145 (2002)
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[Publications] 櫻井 智美: "《札部韻略》与元代科挙"元史論叢. 第9輯(未定). (2003)