2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J00841
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永井 佳代 京都大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | エスキモー・アリュート語族 / 形態論 / シベリア・ユピック語 / 能格性 |
Research Abstract |
これまでの現地調査で得られたシベリア・ユピック語の音声資料ならびに文字資料を整理、データベース化して、記述研究をすすめた結果、以下の知見が得られた。 1.シベリア・ユピック語の形態音韻論にかんして、その規則は一見複雑にみえるが実際には、音節構造の保持と音素配列論の制約に基づいている。 2.従属法動詞を含む従属節と主節の主語が必ず同一でなくてはならないとこれまで先行研究において主張されていたが、実際には必ずしも同一でなくてもよいことがこれまで得られたテキスト資料の分析により明らかになった。 3.従属節と主節の主語が同一ではない場合は、従属節は必ず自動詞であり、その動詞は動作と言うよりもむしろ状態を表すものであるという傾向が見られる。 4.従属節と主節の主語が同一でない場合にしばしば観察される接尾辞-uと-umaは、それぞれ他動詞を自動詞化する機能をもち、とりわけ、動作者動詞語幹とともに用いられる場合には能格言語でありながら受動化する機能をもつ。 5.これまで従属法動詞の標識は肯定文の場合には-lu、否定文の場合には-naを用いるとされてきたが、テキスト資料の分析からそれらが相補分布をなしているのではなく、別個の法の標識として機能している。 以上にかんしては現在国内、国外の雑誌に投稿準備中である。 このほか、消滅の危機に瀕した言語としてのシベリア・ユピック語の置かれている言語状況については3本の論文として発表している。(次ページ参照)
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 永井 佳代: "シベリア・ユピック語の人称の屈折を示す代名詞的指示詞について"環太平洋の言語,文部科学省特定領域(A)「環太平洋の言語」成果報告書A2-033,大阪学院大学(津曲敏郎編). 10巻. 19-32 (2003)
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[Publications] 永井 佳代: "シベリア・ユピック語の現状と問題点"消滅の危機に瀕した言語の研究の現状と課題(崎山理編),国立民族博物館 調査報告,国立民族学博物館. 39号. 295-298 (2003)
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[Publications] 永井 佳代: "極北の国際語-シベリア・ユピック語"北のことばフィールド・ノート-18の言語と文化(津曲敏郎編著)(北海道大学図書刊行会). 151-162 (2003)
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[Publications] 永井 佳代: "島ゆえに生き残った言語"月刊言語(大修館書店). 1月号. 74-80 (2004)