2003 Fiscal Year Annual Research Report
情報関連ハイテク産業の成長と都市経済の構造変化―シアトルを事例に―
Project/Area Number |
02J00847
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山縣 宏之 京都大学, 経済学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 米国ソフトウェア産業 / 産業集積 / クラスター / シアトル / ベンチャーキャピタル / エンジェル / Washington Software Alliance / 立地要因 |
Research Abstract |
本年度は3年計画の2年目として、シアトルの情報関連ハイテク産業の内部構造を明らかにすることを予定していた。 本年度の研究成果は、以下の通りである。第一に、米国ワシントン州シアトルのワシントン大学地理学部にて客員研究員として研究活動を行い、欧米の地域産業論、経済地理学の最新の研究成果を摂取するととともに、米国におけるハイテク企業調査法を現地研究者W.Beyers氏をはじめとするワシントン大学地理学部スタッフから学び、現地調査を円滑に実施することができた。 第二に、昨年度に引き続き、シアトルのソフトウェア産業の業界団体Washington Software Allianceの調査担当者Lew McMurran氏の協力を得つつ追加で9企業へのヒアリングを行い、なぜシアトルに関連ハイテク産業が集中するのかを、立地要因(特に技術者確保の重要性と顧客について)、大学研究機関、業界団体、ベンチャーキャピタルやエンジェル(個人投資家)とソフトウェア企業との間の関係のあり方に注目して、聞き取り調査した。 本年度の調査を通じて、第一に、マイクロソフト社の地域的インパクトは主にソフトウェア技術者の集積、地域労働市場の形成に限定されており、スピンオフやベンチャー資金の供給、ソフト開発のアウトソーシング等では想定したほど大きなインパクトがないこと、第二に、中小ソフトウェア企業に注目すると、シアトルの中小ソフトウェア企業集積が単にマイクロソフト社からのスピンオフにより形成された集積ではないこと、すなわち同社から独立した企業群が存在し、大学や業界団体などシアトル独自の関連組織が中小ソフトウェア企業を支えクラスターを形成していることを明らかにした。 なお現時点では印刷された成果は出ていないが、以上の研究成果については一度学会誌に投稿し、現在レフェリーの意見をもとに書き直し中である。早期に再投稿を予定している。
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