2002 Fiscal Year Annual Research Report
くりこみの理論の拡張による高次多項式の力学系の研究
Project/Area Number |
02J00856
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
稲生 啓行 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手
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Keywords | 複素力学系 / くりこみ / 擬等角手術 |
Research Abstract |
連結なJulia集合をもつ3次多項式で,一部分に制限すると2次の擬多項式写像で連結なJulia集合をもつものになるものを考える.さらに,この擬多項式写像の充填Julia集合Kに含まれない分岐点(次数の仮定から一意的に定まる)の軌道がKに交わるとする.このような3次多項式のパラメータ全体に対して,2次の擬多項式写像とハイブリッド同値な2次多項式とその充填Julia集合上の点(分岐点の軌道で最初にKに含まれる点に対応するもの)の組を対応させる,という写像を考える. 組合せ論的性質をうまく固定して考えたとき,BuffとHenriksenは,中立的な不動点を持つ2次多項式を固定したときにこの写像の逆写像が充填Julia集合から3次多項式のパラメータ空間の中への同相写像を与えることを示した.しかし彼らの手法は2次多項式のパラメータ空間を解析するときの手法を応用したものであり,中立的または吸引的な不動点を持つときのように解析的な1次元のパラメータ空間の上で考えられる場合にしかうまくいかない. そのため私は擬等角手術を用いて,Buff-Henriksenの結果と同じような組合せ論的性質をもつ場合に,上の写像の逆写像を具体的に構成する方法を与えた.これによってBuff-Henriksenの結果を任意の充填Julia集合が連結な2次多項式まで拡張できることを示した.従ってこの場合上の写像が全単射になることがわかった. この写像が同相になるということは,3次多項式のconnectedness locusの中に自然に2次多項式とその相空間の積空間の構造が入ることを意味するのであるが,この問題は擬多項式写像と多項式との共役写像が分岐点において(パラメータに関して)連続的に動くかどうかに帰着できることを示した. 一般に共役写像はパラメータに関して連続性ではないことが知られており,この場合も連続性は成り立たないであろうと予想している.
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[Publications] 稲生 啓行: "Renormalization and rigidity of polynomials of higher degree"Journal of Mathematics of Kyoto University. 42. 351-392 (2002)
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[Publications] 稲生 啓行: "Surgery construction of renormalizable polynomials"京都大学数理解析研究所講究録「複素力学系とその関連分野の研究」. 1269. 12-23 (2002)