2003 Fiscal Year Annual Research Report
SecMの翻訳アレスト配列:分子機構と生物学的意義
Project/Area Number |
02J00937
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中戸川 仁 京都大学, ウイルス研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | タンパク質膜透過 / リボソーム / 翻訳 / 遺伝子発現制御 / SecM / SecA |
Research Abstract |
(目的)大腸菌分泌タンパク質SecMは、タンパク質膜透過装置の活性を自身の分泌としてモニターし、それに応じて同一オペロン下流にあるタンパク質膜透過駆動因子SecAの発現を制御している。これまでの研究により、SecMは、そのC末端領域に存在するアミノ酸配列「FXXXXWIXXXXGIRAGP(アレスト配列)」で、合成途上にリボソームのトンネルの内壁と相互作用することにより、自身の翻訳伸長を停止させることを示した。この翻訳伸長停止(アレスト)は、リボソーム外部に露出したSecMのN末端領域が、細胞膜のタンパク質膜透過装置により「引っ張られる」と解除される。このように、SecMの翻訳アレストは、タンパク質膜透過装置の活性に応じて持続性が変化する。停止したリボソームにより、secM-secA mRNAの遺伝子間領域の二次構造が変化し、SD配列が露出して、SecAの発現が上昇する。本年度は、以上のような翻訳アレストの分子機構と、それによるSecAの発現量制御に加え、SecAの機能発現に対するSecMの役割について研究した。 (成果)プラスミドからsecM、secA両遺伝子を補いつつ、染色体上のsecM-secA遺伝子を欠失させた株を作成し、調べることにより、上流にsecMを伴わずにSecAを発現している細胞では、タンパク質の分泌活性が低いことを見いだした。secAとは別のプラスミドからsecMを補っても、この欠損を回復させることはできない。さらに、プラスミドからの発現をシャットオフして培養を続け、細胞内のSecAの存在量を低下させていきながらタンパク質分泌活性を測定したところ、上流にsecMが存在する場合でも、翻訳アレスト配列やシグナル配列に変異を持つような場合では、野生型secM-secAプラスミドからSecAを発現させた場合よりも、正常な分泌活性を示すためにより多くのSecAを必要とすることが明らかとなった。これらの結果から、SecAが効率よく機能するためには、上流のSecMが翻訳アレストを起こし、膜透過装置にターゲティングされることが必要であることが示唆された。SecMが合成途上に膜透過装置にターゲティングされることは、secM-secA mRNAが膜近傍まで運ばれることにつながり、それによって新規に合成されたSecAがリン脂質やSecYEG膜透過チャネルと速やかに相互作用できるため、このような機能促進が起こるものと考えている。実際、新規に合成されたSecAとSecYとの架橋産物が、シグナル配列欠失型secM-secAにおいて、野生型に比べて低下するという結果も得た。また、蛍光in situハイブリダイゼーション法により、secM-secA mRNAの細胞内局在について調べた結果、螺旋状の染色パターンも得られている。
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Research Products
(1 results)