2002 Fiscal Year Annual Research Report
ハゼ科魚類トウヨシノボリの性的二型形質に働く資源量に対応した性陶汰圧の評価
Project/Area Number |
02J00963
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 大輔 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | ヨシノボリ類 / 性淘汰 / 同性間競争 / 異性間選択 / 性的二形 / 底質環境 / 琵琶湖 / ヌマチチブ |
Research Abstract |
平成14年度は,研究対象である琵琶湖に生息するトウヨシノボリにおける個体群間の遺伝子流入の有無を調べるために予備的な遺伝子解析(ミトコンドリアDNAのPCR-RFLP法;8酵素を使用)と,底質環境と体サイズの性的二形との関連性を知るために,湖内の底質環境の異なる5地点(砂堆帯:近江舞子浜,砂礫帯:鵜川河口浜・南浜,岩礁帯:海津大崎・大中浜)における個体採集を行った。また,比較のために本種と同所的に生息しているハゼ科魚類ヌマチチブの採集も近江舞子浜と南浜で行った。 遺伝子解析には近江舞子浜・海津大崎・南浜の採集標本を用いた。その結果,個体群間で遺伝的差異は見られなかった。よって,本種の個体群間の遺伝子流動は高頻度で生じていると予想される。また,湖内個体群と河川個体群(百瀬川・鵜川・姉川)との比較を行ったところ,両者の間に差は見られなかった。これまで,湖内と河川の個体群は交流していない可能性が示されていたが,今回の結果は両個体群間で個体の移出入が起こっていることを示唆する。 湖内5地点においてトウヨシノボリの個体採集を行い,体サイズを計測したところ,どの地点でも雌よりも雄の方が体サイズが大きいという傾向が見られた。しかしながら,まだサンプルサイズが小さく,今後さらに採集個体数を増やして詳細な解析を行う予定である。 ヌマチチブの雌雄の体サイズを比較したところ,石の多い南浜では,雌雄の平均全長に有意な差はみられなかったが,石の少ない近江舞子浜においては,雌よりも雄の方が全長が大きいことがわかった。また近江舞子浜では大きな雄しか繁殖していなかったが,南浜では小型の雄も繁殖に参加していた。現在,雄の成長と繁殖への投資のタイミングを明らかにするために生殖腺重量の計測と鱗による齢査定を試みている。
|