2004 Fiscal Year Annual Research Report
雌雄細胞間の分子認識に関わる遺伝子をもちいた種間交雑の制御
Project/Area Number |
02J00972
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清水 健太郎 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 有性生殖 / 生殖隔離 / シロイヌナズナ / 自家不和合成 / 自家和合成 / 種間交配 / マップベーストクローニング / 近縁種 |
Research Abstract |
雌雄細胞間の相互作用は、適切な雄を導くことに加え、近親交配の排除(自家不和合性)、種間交雑の阻害(生殖隔離)といった重要な機能がある。これらの機能はこれまで生態・進化学で研究されてきたが、本研究では分子レベルからの解析を行った。 1.シロイヌナズナ近縁種の調査・採集 ドイツにてArabidopsis lyrata subsp. petraeaのフィールド調査と採集を行った。また、日本のミヤマハタザオの採集をすすめた結果、Arabidopsis lyrataとは異なって、異質倍数体であることを示した。これにより、Arabidopsis kamchaticaとして新種記載を行う。 2.種分化の初期過程としての、シロイヌナズナ地域系統間の生殖隔離 アフリカCvi第5染色体のELClα遺伝子とヨーロッパLerの第一染色体のELClb遺伝子の両者がホモ接合になった際に致死となる。これは、この2系統が種分化の初期過程にあることを意味する。マップベーストクローニング法によって両致死遺伝子の単離を進めるなかで、生殖隔離遺伝子の近傍で組換え率が下がっていることが示唆された。組換え率の局所的な低さが種分化に寄与するという最近の説を支持する。 3.自家不和合性遺伝子の変異による自殖性の急速な進化 シロイヌナズナはSRKとSCR遺伝子が偽遺伝子となったことで自家和合性(自殖性)になったことが知られていた。世界の21のシロイヌナズナの系統から両遺伝子の塩基配列を決定した。分子集団遺伝学的解析により、SCRの機能欠損型対立遺伝子に強い自然選択が働いたことを示した。これは、自殖性が環境によっては有利になるというダーウィンのreproductive assurance model、に対する分子レベルからの支持である(Scicnce, submitted)。
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