2002 Fiscal Year Annual Research Report
旧世界ザル、類人猿、ヒトに共通して見られる骨関節疾患についての進化学的研究
Project/Area Number |
02J00985
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中井 將嗣 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 野生チンパンジー / 関節疾患 / 個体識別 / タンザニア / マハレ |
Research Abstract |
今年度前半は、京都大学霊長類研究所に保管されている各種霊長類の骨格標本を中心に調査を行い、各種霊長類においてそれぞれ骨関節疾患がどのような生体反応として現れるのか、その特徴を把握することと同時に疾患の頻度を調べた。また、海外における野生チンパンジーの骨格調査に備え、チンパンジーの形態と病理に関する資料を収集し、独自の調査票を作成した。 9月後半から11月半ばまでの期間、タンザニアに渡航し、マハレ山塊国立公園において野生チンパンジーのオトナ5個体分の骨格標本を調査した。骨の形態特徴を生前の観察記録と照合させることによって、5個体すべての個体名が判明したことから、骨からの個体識別はチンパンジーに対しても非常に有効な手法であることが明らかになった。マハレのチンパンジーには関節疾患が多く、関節疾患は少ないと報告されているゴンベのチンパンジーとは違いが見られた。外傷はゴンベ同様マハレでも非常に多く、外傷の生じた部位や外傷の形状から、外傷には他のチンパンジーからの攻撃によるものと、高所からの転落によるものの2種類があることが推定された。 タンザニアから帰国した後は、マハレの野生チンパンジー見られた骨関節疾患を、他の霊長類の骨関節疾患と比較した。その結果、これまでヒトのみに存在すると考えられていたある種の関節疾患が野生チンパンジーにも存在することが発見され、関節疾患に対する生体反応においてもヒトとチンパンジーが非常に近い関係にあることが示唆された。 ヒト以外の霊長類の研究と平行して、ヒトの骨関節疾患の由来と歴史、特徴を探ることを目的として、東アジア地域から出土した古人骨における骨関節疾患に係わる資料を年間を通して継続的に収集した。
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Research Products
(1 results)