2002 Fiscal Year Annual Research Report
クライオ電子顕微鏡法によるセルロース合成酵素の立体構造解析
Project/Area Number |
02J01006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今井 友也 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | セルロース合成酵素 / キチン合成酵素 / 糖転移反応 / 電子回折 / 電子顕微鏡 / 単粒子解析 |
Research Abstract |
1 本研究課題の目的は、セルロース合成酵素の機能をその構造から明らかにすることにある。この機能に関して、一つの大きな矛盾がこの5年ほど問題となってきた。すなわち、セルロースの生合成時、どちらの分子末端(還元末端・非還元末端)で伸長反応が行われるのかという二者択一問題において、現在まで両方の可能性が示されている。 この問題の解決にあたり、セルロース合成酵素と同じ糖転移酵素ファミリー2(ファミリーGT-2)に属するキチン合成酵素やヒアルロン酸合成酵素との比較は重要であろう。そこでキチン合成の方向性を明らかにするため、電子回折による結晶学的解析と還元末端可視化法を組み合わせた実験を行った。その結果、キチン分子鎖の還元末端は合成酵素から外側を向いて吐出されていることをin situで明示した。つまりキチンの生合成時、その伸長反応は分子鎖の非還元末端で起こると結論付けた。既報の生化学的データとSpsAタンパク(GT-2糖転移酵素の一つ)の触媒部位の原子レベル構造を考えると本結論はより適当なものであり、これらの考察に基づき「セルロース合成酵素をはじめとするGT-2酵素は、分子鎖の非還元末端側への糖転移反応を触媒する」という結論を示した。本結果は、セルロース及びキチン合成酵素、あるいは他のGT-2糖転移酵素の構造モデルを機能の観点から考察する際、重要なヒントとなるであろう。 2 電子顕微鏡による単粒子構造解析を目指して、酢酸菌からセルロース合成酵素を単離することを試みた。現在まで好ましい結果は出ていないが、界面活性剤のスクリーニングなどの生化学的実験を引き続き行う予定である。
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