2002 Fiscal Year Annual Research Report
森林流域の空間スケールに着目した渓流水質形成機構に関する水文学的研究
Project/Area Number |
02J01063
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
勝山 正則 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 水文過程 / Bedrock groundwater / Riparian zone / Hillslope zone / 空間スケール / 湿地 / トレーサー / 渓流水質 |
Research Abstract |
風化花崗岩からなる山地源流域において,流域空間スケールの拡大に伴う水文過程および水文化学過程の変化を明らかにすることを目的に,滋賀県南部に位置する桐生水文試験地内に面積の異なる6つの観測流域網を設定した.観測流域の面積は0.024,0.086,0.40,0.68,1.75および5.99haである.各流域末端からの流出流量と流域面積との関係を見ると,流量は流域面積拡大とともに増加し,1.75および5.99haの流域で最大となり,両者の流量はほぼ等しかった.5.99haの流域では水収支が閉じることが明らかにされていることから,風化花崗岩流域における流量のREA(水文現象を規定する空間代表性をもつ最小面積)は10^0haオーダーであることが明らかになった.また小面積流域では基岩面以下に浸透し,量水堰を通過しない流出成分が存在し,この成分が流域面積の拡大とともに流出に寄与することが示唆された.またSiO_2濃度と面積の関係から,流域面積拡大とともに高濃度のSiO_2を含む基岩浸透地下水の寄与により渓流水中のSiO_2濃度が上昇することが明らかになった.SiO_2濃度形成のREAは流量の場合と同様であると考えられる.渓流水中のNO_3濃度と面積の関係を見ると,1.75haの流域までは面積拡大とともに濃度が低下したが,5.99haの流域では再び上昇が見られた.5.99haの流域の河道沿いに広がる湿地通過によるNO_3濃度の変化を見ると,還元条件下における脱窒によって流下とともに顕著な濃度低下が見られたことから,この流域末端での濃度上昇は側谷斜面からの高濃度のNO_3を含む流出の寄与によるものと考えられる.以上のことから流域スケール拡大に伴う水文化学現象を明らかにするには,流域内の各部位における内部プロセスを明らかにするとともに,流域を構成する空間要素の存在比率を把握することが重要となる.
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[Publications] Katsuyama, M, Ohte, N.: "Determining the sources of stormflow from the fluorescence properties of dissolved organic carbon in a forested headwater catchment"Journal of Hydrology. 268. 192-202 (2002)
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[Publications] 尾保手朋子, 大手信人, 田中広樹, 勝山正則, 谷誠: "ヒノキ林におけるガス態による乾性沈着量の定量化-ビッグリーフモデルと林内雨法を用いたSO_2-S流入量の推定"日本林学会誌. 84. 91-99 (2002)
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[Publications] 金秀珍, 大手信人, 勝山正則, 川崎雅俊, 徳地直子, 保原達: "マツ枯れが土壌溶液および渓流水中の硫黄動態に及ぼす影響"第6回水資源に関するシンポジウム論文集. 6. 443-448 (2002)
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[Publications] Ohte, N., Tokuchi, N., Katsuyama, M., Hobara, S.Asano, Y., K.Koba: "Episodic increases in nitrate concentrations in streamwater due to the partial dieback of a pine forest in Japan : Runoff generation processes control seasonality"Hydrological Processes. 17. 237-249 (2003)