2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J01114
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉田 明宏 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 量子制御 / 画像分光法 / 水ダイマー |
Research Abstract |
分子の光解離反応をレーザー光により直接制御する「量子制御」は、理論的に様々な手法が考えられているが、実験的な報告はまだ数少ない。そこで実験的に試みる場合は、先ず簡単な分子で行うべきであり、理輪的に、簡単な気相分子としてHI分子などハロゲン化水素からの光解離の量子制御が報告されている。我々はハロゲン化水素の光解離からの水素原子を画像分光法により直接観測することによって量子制御を試みる。しかし我々は画像分光法装置を所有しているが水素原子を観測するためには改良をする必要があった。改良した画像分光法装置を用いることにより水素原子の観測が可能であることを確認するため次の実験を行った。 クラスターの光解離反応はクラスターの構造やファンデルワールス力のような弱い結合の反応ダイナミクスを明らかにすることができると考えられる。水分子は、186nm以下の近紫外域での吸収帯が古くから良く知られている。最近、理論的に水分子において、ダイマーは吸収帯が長波長側にレッドシフトし、他のトリマーなどのクラスターは反対に短波長側にブルーシフトすると報告されている。そこで水ダイマー以外の吸収が存在しない205nmにおける水クラスターの光解離反応の観測を試みた。(H_2O)_2ダイマーから光解離したH原子の観測を試みたが、信号のS/N比が非常に悪かったため、観測が難しかった。そこで(D_2O)_2ダイマーの205nmの光解離からのD原子の観測を試みた。その結果、(D_2O)_2ダイマーの205nmにおける光解離は二つの過程が存在することがわかった。これにより(D_2O)_2ダイマーの構造と反応ダイナミクスの知見を得ることができた。この成果はJournal of Chemical Physicsに投稿する予定である。 以上の結果、HI原子の量子制御を観測することは困難であるが、DI原子では観測が可能であることがわかった。
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