2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J01114
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉田 明宏 京都大学, 工学研究科, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | 量子制御 / 中赤外光 / AgGaS_2 / 非同軸位相整合 |
Research Abstract |
量子制御は、レーザー光と原子・分子の波束との相互作用により直接、化学反応を制御しようとする手法である。既に国内外において多くの理論研究や検証実験が盛んに行われている。さらに工業的な応用を見据えた実験も始まっており、現在、最も注目されているトピックスの一つである。 市販されている波長可変なレーザーは、紫外・可視領域がほとんどであるため、量子制御実験は電子遷移で行われていることが多い。検証実験においては簡単な原子・分子で十分であるため、まだ問題はない。しかし今後、工業的に利用することを考えると分子数の大きな分子では、解離およびイオン化など破壊的な競合過程が多数、存在するため紫外・可視レーザー領域による量子制御は不利であると予想される。それゆえ今後は中赤外域のレーザー光による振動・回転遷移を利用した量子制御が要求される。しかし波長可変な中赤外光レーザーは、大規模な施設が必要な自由電子レーザーしか存在しない。 そこでTi:サファイアレーザーにより発生させた760nmおよび830nmの可視レーザー光パルスを、非同軸に非線形結晶AgGaS2に入射し、差周波混合過程による中赤外光の発生を試みた。二つの可視レーザー光パルスを同軸に入射すると位相整合条件が厳しく、現在までに半値全幅50cm-1の中赤外光発生が報告されてい,る。一方、非同軸方向から二つの可視レーザー光パルスを入射すれば位相整合角の許容角が大きくなるため、非線形結晶の角度を固定したままで、帯域の全てを有効に利用することが可能である。今回、我々は非同軸入射によって8μmから12μmで、半値全幅200cm-1の中赤外光の発生に成功した。これにより中赤外光による振動・回転遷移を利用した量子制御が可能となると考えられる。また広帯域の中赤外光が発生できるので、短パルス中赤外光の発生が可能であると考えられる。
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