2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J01123
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中島 啓介 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | シロアリ / セルロース / セルラーゼ / 共生 / 木材 |
Research Abstract |
下等シロアリの一種であるイエシロアリの消化管内には、セルロース分解の場が二つあります。中腸における分解系はシロアリ内源性のセルロース分解酵素により構成され、また、後腸における分解系は共生鞭毛虫由来のセルロース分解酵素により構成されています。これら二つの系が成立した過程を調べるために行った本年の研究の概要は以下の三点にまとめられます。 1.シロアリ内源性のセルロース分解酵素と共通の祖先遺伝子に由来する遺伝子をオカダンゴムシから単離し、同遺伝子が中腸腺で発現していることを逆転写ポリメラーゼ連鎖反応で明らかにした。このことから、昆虫であるシロアリと甲殻類であるオカダンゴムシの共通祖先(節足動物の祖先)にセルロース分解酵素の祖先遺伝子がすでに存在していた可能性が強く示唆された。 2.シロアリ・オカダンゴムシのセルロース分解酵素と共通の祖先遺伝子に由来する遺伝子がカタユウレイボヤのゲノム上に存在し、発現していることをin silicaで示した。このことから、旧口動物であるシロアリ・オカダンゴムシと新口動物であるカタユウレイボヤの共通祖先(左右対称性動物の祖先)にセルロース分解酵素の祖先遺伝子がすでに存在していた可能性が強く示唆された。 3.セルロース分解酵素遺伝子の分子系統解析を行い、動物に由来する遺伝子が単系統を成すことを示した。 これらの結果は、シロアリ内源性のセルラーゼの存在がシロアリと鞭毛虫との間の共生関係の成立に先立つことを支持している。これを単純に解釈したところ、内源性の酵素により構成されたセルロース分解系の雛形が既に存在しているところに共生鞭毛虫に由来する酵素により構成された分解系が後から加わったというシナリオが、シロアリの二つのセルロース分解系の成立過程として浮かび上がってきた。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] K.Nakashima, L.Yamada, Y.Satou, J.-i.Azuma, N.Satoh: "The evolutionary origin of animal cellulose synthase"Development Genes and Evolution. 214・2. 81-88 (2004)