2003 Fiscal Year Annual Research Report
健康リスク選好を考慮した食品安全基準の経済効率に関する実証的研究
Project/Area Number |
02J01125
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹下 広宣 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 食品安全 / 健康リスク / 食料消費 / 定量的評価 / 遺伝子組換え / ヘドニック / BSE |
Research Abstract |
昨年度は、安全基準の策定による食生活の変動をとらえた。今年度は、さらにその研究を発展させ、安全政策によって生じる消費者厚生をとらえることを試みた。これは専門家の評価する安全確保の観点からではなく、消費者厚生の観点から安全政策の効率性を評価するという考えにたつものである。 安全政策としてBSE対策をとりあげた。分析では、家計調査データを使って牛肉需要の時系列分析を行い、その推定結果を利用して次の二つの厚生効果を計測した。一つは、BSE対策により消費者が回避できた厚生損失(CV)で、もう一つは安全宣言後、市場に流通している牛肉が安全であることを消費者が知らなかった、または消費者が政府を完全に信頼できなかったために、発生した厚生損失(CI)である。 分析結果からは以下のことが明らかになった。なお、計測モデルに改善の余地が残されているため以下に示す結果は最終的なものではない。 BSE発生以降の牛肉消費の変化は次であることがわかった。2001年10月に牛肉需要関数の定数項の変化としてとらえられる構造変化が起こっており、さらに2001年10月から翌年年3月までは、この構造変化以上に消費が減少している。この結果を踏まえて厚生効果の計測を試みた。その結果、2001年11月から翌年12月までで見ると、一世帯あたりのCVは約2683円/月と推計された。CIについては次の二つのシナリオのもとで推計した。(1)消費者が政府を信頼し、BSE対策がとられた後、直ちに2002年4月以降の状態に到達できていたと想定する場合、(2)BSE対策がとられた後、直ちに2001年8月以前の状態に回復できたと想定する場合。シナリオ(1)の場合、2001年11月から翌年3月のCIの総額は一世帯あたり約1206円と推計された。シナリオ(2)の場合、2001年11月から翌々年3月のCIの総額は一世帯あたり約8112円と推計された。
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Research Products
(1 results)