2004 Fiscal Year Annual Research Report
健康リスク選好を考慮した食品安全基準の経済効率に関する実証的研究
Project/Area Number |
02J01125
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹下 広宣 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 食品安全 / 健康リスク / 定量的評価 / 厚生効果 |
Research Abstract |
昨年度は、専門家が評価する安全確保の観点からだけではなく、消費者厚生の観点から安全政策の効率性を評価するという視点から、BSE発生に伴う消費者の厚生効果を評価した。今年度は、昨年と同様の分析手法を援用して2005年1月から3月にかけて日本国内で確認された鳥インフルエンザに伴って発生した消費者の厚生効果を評価した。分析では、家計調査データを使って鶏肉需要の時系列分析を行い、この推定結果を利用して消費者に発生したと考えられる厚生効果として無知の費用(Cost of Ignorance:以下ではCI)を推定した。分析結果からは以下のことが明らかになった。 まず鶏肉の消費構造については次のことが明らかになった。国内におけるBSE発生以降、鶏肉消費を恒久的に上方にシフトさせる構造変化が見られる。これはBSE発生に伴い消費者は鶏肉の品質に対する評価を相対的に上昇させていることを意味する。また国内で鳥インフルエンザが確認された2005年1月から同年5月までの間、一時的に鶏肉の品質に対する評価が低下していることがわかった。この結果を踏まえて厚生効果を推定しCIを算出した。その結果、2006年1月から5月までの一世帯あたりのCIの総額は約92円と推計された。これを同期間の食料支出に占める割合で見ると、約0.025%と推計される。 通常食している牛肉や鶏肉を摂取することで、BSEや鳥インフルエンザに関連のある疾病を患うとは考えられていない。にもかかわらず、鳥インフルエンザ発生後の鶏肉消費構造の変化は前年度に分析したBSE発生後の牛肉消費構造の変化と大きく異なるものであった。これは専門家の評価するリスクと消費者の評価するリスクを一致させることが容易でないことを意味するものであり、専門家による安全性評価にのみ依拠した安全性政策では大きな厚生損失をもたらす場合があることを示唆するものである。
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Research Products
(1 results)