2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J01138
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
黒宮 一太 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ネイション / 帰属 / ハンナ・アレント(Hannah Arendt) / 土地 / 記憶 / ナショナリズム |
Research Abstract |
今年度前半は、次の二つの論文を執筆し投稿した。(1)論文「ハンナ・アレントにおけるナショナリズム論の両義性」『人間・環境学』第12巻、(2)論文「土地・記憶・ネイション--Hannah ArendtとAnthony D.Smithによるネイション論の比較考察から--」『相関社会科学』第13号。(1)は、二十世紀の政治理論家ハンナ・アレントによって書かれた著作『全体主義の起原』と、それと同時期に発表されたユダヤ人国家に関する諸時事論文から窺い知れる、彼女のナショナリズム観、及びネイション観について検討した論文である。ナショナリズム研究で提示される「二つのナショナリズム」(civic nationalismとethnic nationalism)との比較を通して、彼女に見られる独自のナショナリズム観、ネイション観を抉出した。(2)は,まずハンナ・アレントが提起したと思われる全体主義以後のネイションに関する課題を明らかにし、次にそうした彼女の問題意識を経由することによってネイションを規範的に論じた現代的ネイション論を批判的に検討する論文である。考察を通して、今後のネイション(論)の課題を示した。 後半ではまず、上の論文(2)の内容を発展させ、政治思想読書会(第百四十七回二〇〇三年九月二十七日)で報告を行った。論文(2)で十分に検討することができなかった現代の規範的ネイション論についてさらなる考察を進め、national identity、national belongingについて考えていく際の論点を提示した。その後現在に至るまで、次の三つに従事している。(1)五月に開催される第十一回政治思想学会での報告の準備、(2)四月にロンドンで開催されるASEN(the association for the study of ethnicity and nationalism)14^<th> annual conference 参加のための準備(主に、個人的に約束した研究者との研究打ち合わせのための準備)、(3)ナショナリズムとそれに近接する他の諸イズムとを比較考察する論文の準備。
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Research Products
(2 results)