2002 Fiscal Year Annual Research Report
ポリグルタミンによる凝集体形成に関与する因子p97/VCPの機能解析
Project/Area Number |
02J01177
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 妙子 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | p97 / VCP / ポリグルタミン病 / 空胞 / ERストレス / 小胞体関連分解(ERAD) |
Research Abstract |
近年、我々は遺伝性ポリグルタミン病の一つMachado-Joseph病の病因タンパク質と遺伝学的・生化学的に相互作用する因子としてp97/VCPを同定した。VCPはAAAファミリーに属するATPaseであり、二つのATPaseドメイン(D1,D2)をもつ。神経変性疾患におけるVCPの役割を明らかにするために、ATPase活性に必須のWalkerモチーフに点変異を持つ各変異体を作成し、それぞれを神経様の分化を示すPC12細胞株に導入した。その結果、D2ドメインの変異体K524Aがもっとも激しく空胞化を伴う細胞死を誘導した。テトラサイクリンの除去により発現誘導が可能なtet systemを用いてVCPの野生型およびK524A変異体を発現するPC12細胞株を樹立し表現型を詳しく調べた。K524A変異体は、安定に発現・蓄積し、野生型と同様、細胞由来のVCPや補助因子と複合体を形成することができたが、K524A変異体を発現する細胞は空胞を形成し死に至った。精製VCPによるin vitroアッセイの結果、野生型に比べてK524A変異体はほとんどATPase活性を消失していることが明らかとなった。即ち、K524A変異体の発現はドミナントに細胞内VCPのATPase活性を低下させると考えられる。さらに、K524A変異体によって誘導される空胞は、異常に拡張した小胞体(ER)であり、ERストレス応答を伴うことがわかった。また、核・膜画分にポリユビキチン化したタンパクが異常に蓄積し、それらはVCPと結合状態にあった。これらの結果は、VCPがERの異常タンパク質を細胞質に引き出して分解する小胞体関連分解(ERAD)に関与していることを示唆している。ERADにより分解されることが知られているCFTRΔ508を用いて調べたところ、K524A変異体はCFTRΔ508の分解を抑制しCFTRの蓄積と凝集を促進した。以上の結果より、VCPのATPase活性の低下はERADを抑制して小胞体の品質管理機構を乱し、結果として小胞体ストレスと小胞体の異常な拡張を伴う細胞死を引き起こすことが明らかとなった。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Taeko, K.: "Functional ATPase activity of p97/valosin-containing protein (VCP) is required for the quality control of endoplasmic reticulum in neuronally differentiated mammalian PC12 cells"The Journal of Biological Chemistry. 277. 47358-47365 (2002)
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[Publications] Taeko, K.: "Molecular analyses on Machado-Joseph Disease"The Cytogenetics and Genome Research Journal. (発表予定). (2003)