2003 Fiscal Year Annual Research Report
高圧合成法による新奇化合物の探索と高圧下単結晶作製及びその物性研究
Project/Area Number |
02J01187
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齊藤 高志 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 高圧合成法 / 遷移金属酸化物 / 高圧下単結晶育成 / 磁性 / 金属絶縁体転移 |
Research Abstract |
1.ペロブスカイト型化合物RNiO_3(R=ランタノイド、Y,Tl等)における金属絶縁体転移について明らかにするため、以下の研究を行った。まずこれまで既に得られていたPrNiO3の単結晶試料を用いた共鳴X線散乱実験及び放射光X線回折実験を行ったところ、理論的に存在が期待されていた軌道秩序は観察されなかった。これはNi^<^<3+>>が電荷不均化を起こし、縮退したe_g軌道に入る電子数が1ではなくなるためと考えられる。またPrNiO_3及びNdNiO_3について放射光を用いた粉末X線回折データの解析をさらに進め、両物質におけるNi^<^<3+>>の電荷不均化の存在を明らかにすると共に構造及び電荷不均化の温度変化について定量的に調べた。両物質とも金属絶縁体転移に伴い急激にNi^<3+>の電荷不均化(2Ni^<3+>→Ni^<3+^δ>+Ni^<3-^δ>)が進み、不均化の量を示すδが転移点の10K下で既に一定値δ〜0.35に達した。このようにRNiO_3ペロブスカイトがJahn-Teller歪みを起こさず電荷不均化するのは、Ni^<3+>という異常高原子価イオンを含むためにNi-O結合の共有結合性が比較的強い、ということが原因と考えられる。 2.スピネル型化合物Co_2SiO_4を高圧合成法によって作製し、その磁性・輸送特性について調べた。この化合物において磁性を担うCo^<2+>(d^7)イオンはパイロクロア格子を形成しており、幾何学的なフラストレーションを持つことから、低温においてスピン系のフラストレーションに起因する新奇な物性の発現が期待される。磁化測定からCo^<2+>はスピン3/2を持ち、磁気異方性が強く強磁性相互作用が働いていることが明らかになった。またスピン系がフラストレーションを持つにもかかわらず低温において反強磁性長距離秩序を示すことから、スピン系と格子系が強く結合して転移点で構造相転移を起こしていることが予想される。さらに磁気秩序高温から短距離磁気秩序が発達している事が磁化や比熱の測定から示唆された。低温での構造相転移の観察やキャリアードープ効果について引き続き研究を行う予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 太田 仁: "High Field ESR Study of the S=1/2 Diamond-Chain Substance Cu_3(CO_3)_2(OH)_2 up to the Magnetization Plateau Region"Journal of the Physical Society of Japan. 72. 2464 (2003)
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[Publications] 東 正樹: "Single Crystal Growth of Ca_<2-x>Na_xCuO_2Cl_2 and Related Compounds at High Pressures of Several GPa"Journal of Low Temperature Physics. 131. 671 (2003)
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[Publications] 東 正樹: "Single Crystal Growth of Transition Metal Oxides at High Pressures of Several GPa."Physica C. 392-396. 22 (2003)
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[Publications] 東 正樹: "放射光X線回折を利用した高圧合成研究"固体物理. 38. 141 (2003)