2002 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカ牧畜民社会における生業変容と民族間関係の動態に関する人類学的研究
Project/Area Number |
02J01245
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内藤 直樹 京都大学, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 民族誌 / 地域研究 / 生態人類学 / フィールドワーク / エスニシティ / 近代化 / ライフヒストリー / 国際情報交換 |
Research Abstract |
サンブルとレンディーレの社会はそれぞれ独自のクラン体系を有しており、それは社会・文化的に非常に重要な概念である。調査対象であるアリアールはこの両社会のクラン体系を援用している。対象としたマソラ村はマソラ・クランの成員から構成された村であると主張している。しかし、大部分が他クランからの移住者であった。これは、移民の日常生活における便宜、あるいは編入過程であることが、ライフヒストリー調査から明らかになった。この成果は平成14年度日本アフリカ学会学術大会において発表された。平成14年7月-平成15年1月まで、ケニア共和国マルサビット県ライサミス郡マソラ村で継続調査をおこなった。目的は1)2つの民族の地理的境界においてどの場所を放牧地として利用しているか,2)そこでいかなる社会関係をもちつつ牧畜運営をおこなっているのかを明らかにすることである。その結果、1)放牧に適した環境に村とは別に家畜キャンプを作っている,2)キャンプの高頻度の移動と離合集散が明らかになった。高頻度の移動と離合集散の要因は、1)降雨量および降雨地が不安定な状況下での、水場と牧草地の確保,2)キャンプの移動の是非および候補地をめぐる意見の対立が生じた場合には、比較的簡単に分離し、他集団の構成員とキャンプを編成することであった。こうした場合、キャンプの編成相手は、当事者の移住以前の出自クラン出身者であることが多かった。集落における「同一クラン出身者からなる村」という言説の一方での、牧畜運営における上記の特徴は、様々なクラン出身者からなる移民によって構成されたこの村の特徴をあらわにしている。クランは彼らの社会にとって非常に重要なものである。同時にそれは、移住によって変更可能なものである。これは、このシステムの存在を無化にするものに見える。しかしむしろ、彼らは系譜上の一致という概念上の関係性を尊重しつつも、「いま一緒にいる」という具体的な関係をすべりこませることで、民族境界における日常生活を構築していることが明らかになった。現在は上記の資料を整理・分析中である。
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Research Products
(1 results)