2002 Fiscal Year Annual Research Report
低温ヘリウム気体中でのアルカリ原子のスピン関連基礎物理研究への応用
Project/Area Number |
02J01304
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
榎本 勝成 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 永久電気双極子モーメント / アルカリ金属 / ヘリウム / exciplex |
Research Abstract |
今年度は主に、低温ヘリウム気体中においてアルカリ金属原子とヘリウム原子が構成する励起分子(exciplex)の分光研究を行った。このexciplexの分光研究はアルカリ-ヘリウム原子間相互作用ポテンシャルの評価や原子衝突過程の解明に直接的につながり、偏極アルカリ金属原子のスピン緩和の定量的研究や、我々が最終的な目標としている偏極Cs原子を用いた電子の永久電気双極子モーメントの精密測定を行う実験環境の最適化のためにも重要な研究である。 アルカリ金属原子とヘリウム原子がつくるexciplexは、結合エネルギーが弱いため数十K程度の低温でしか安定に存在しえない。しかしこれまでの実験手法では室温以上の温度でしか原子蒸気の生成が行えず、アルカリ-ヘリウム原子間相互作用ポテンシャルに関しても詳細な研究を行うための十分な実験データが得られていなかった。これに対し我々は、レーザーアブレーション法を用いて低温ヘリウム気体中にアルカリ金属蒸気を生成することで、数Kという低温環境でexciplexの生成とそれらからの発光スペクトルを観測することに成功した。またLiからCsまでのアルカリ金属原子について広い温度範囲で発光スペクトルを調べ、exciplexの形状や生成ダイナミクスを論じた。例えば、Csのexciplexではヘリウム原子が2個までしか付着せず、Rbでは6個付着するということを明らかにし、この相違がアルカリ金属原子のスピン-軌道相互作用の強さの違いに起因することを示した。 これらの研究成果は、2回の国内学会発表、1回の海外学会発表、2本の論文投稿(1本はPhys.Rev.Aに掲載、1本は投稿中)を通じて公表した。
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Research Products
(1 results)