2003 Fiscal Year Annual Research Report
反転ピロールを構成ユニットにもつ機能性新規ポルフィリノイドの合成に関する研究
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02J01352
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石塚 智也 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ポルフィリン / N-混乱ポルフィリン / ポルフィリン類縁体 / 金属錯体 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近年、機能性色素として大きな注目を集めているポルフィリン類縁体の合成法の開発、およびその物性・錯化挙動の解明にある。特に反転ピロールを有するポルフィリン異性体、N-混乱ポルフィリン(NCP)およびその類縁体について詳細に検討を行っている。 今年度は、NCPから合成される縮環ポルフィリノイド、N-フューズポルフィリン(NFP)の反応性を検討した。その結果、縮環部分に置換したプロモ基が、パラジウム触媒を用いたカップリング反応に活性で、アリール基やアリールエチニル基が置換したNFPが高収率で合成された。これらの芳香族性置換基は、NFPの電子状態に大きな摂動を与え、その結果、吸収スペクトルの顕著な変化が観察された。NFPは1000nmを越える長波長に光吸収を示すが、特に2つのNFPがエチニル基で直結された2量体では、大きな長波長シフトを示し、その吸収末端は1200mmを超えていた。またNFPは、近赤外領域に比較的強い蛍光を示した。 またNFPの縮環部分は高い反応性を示し、銀塩により酸化することで、縮環部分同士が直接結合したNFP2量体が60%の収率で得られた。さらにNFP2量体を強塩基で処理することにより、混乱ピロールが直接結合したNCP2量体へと定量的に変換された。これらNFP、NCPの各2量体に関しては、X線構造解析によりその構造を明らかにした。興味深いことに、このNCP2量体中では、NCP間の立体反発が大きいために、混乱ピロールが大きく傾き、反転、すなわち本来であれば環内部を向いているはずのβ炭素が環外周を向けた状態で固定されている。またNCP2量体中では、各NCP環が、歪んだ構造にも関わらず、強い芳香族性を示すことがNMRや吸収スペクトルから示された。このことは、NCPの構造的な柔軟性を示すのみならず、NCPからNFPへの変換反応の中間状態のモデルにもなり、またNCPが示す特有の互変異性現象の反応機構に対する重要な証左としても意義深い。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Jia-Cheng Liu, Tomoya Ishizuka, Atsuhiro Osuka, Hiroyuki Furuta: "Modulation of Axial Coordination in N-Confused Porphyrin-Antimony(V) Dibromide Complex by Proton Stimulus"Chemical Communications. 1908-1909 (2003)
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[Publications] Alagar Srinivasan, Tomoya Ishizuka, Hiroyuki Furuta: "Doubly N-fused Pentaphyrin"Angewande Chemie International Edition. (2003)