2002 Fiscal Year Annual Research Report
15、16世紀北イタリア人文主義におけるイメージの役割
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02J01374
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前木 由紀 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ヒュプネロトマキア / エクフラシス / ユマニスム / 活字出版 / アルベルティ / ヴェネツィア / 教養 / モデラータ・フォンテ |
Research Abstract |
(1)活字出版史上初の多数絵入り物語本『ヒュプネロトマキア』(1499年,ヴェネツィア)の挿絵および言葉を分析し、北イタリアにおける古代のイメージの伝播について考察した。本書は、俗語ロマンス的あらすじを持つとは言え、空想的な古代イメージの描写記述(エクフラシス)が内容のほとんどを占めている。その古代観はどのように形成されたのか。建築にまつわる部分に焦点をあて、その発想源を可能なかぎりあきらかにした。その結果、本書に描写される建築作品のイメージが、混成的な特質をもつことが浮き彫りにされた。本書と古代の建築についての記述(プリニウス、ウィトルウィウス等)、同時代の人文学者たちの活動(アルベルティ,フェリチャーノ等)、同時代の造形芸術との関りについて詳細に分析した。(論文「『ヒュプネロトマキア』における言葉とイメージ:「オベリスクの神殿」部分を中心に」『美術史』投稿中) (2)ルネサンス当時の北イタリアにおける教養・教育について、モデラータ・フォンテ『女性の価値』(ヴェネツィア,1600年)を通して考察した。本書はイタリア・ルネサンスにおける初の女性自身による女性擁護の書である。この対話編の前半の内容は男性の非難および女性の賛美であるが、後半部分では登場人物(女性)が博学を披露する。出版などにより急増していた様々な知識が雑多につめこまれているという点では『ヒュプネロトマキア』に通ずるものがある。当時のヴェネツィアの教育制度、出版状況なども概観した。(平成14年12月14日ルネサンス研究会(於 同志社大学)にて口頭発表:論文「モデラータ・フォンテ著『女性の価値』について:ユマニスムにおける女性の教養と教育の一断面」『ルネサンス研究』投稿中)
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