2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J01383
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小山 暁 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 高分子 / 結晶化 / 分子動力学シミュレーション / ポリエチレン / 結晶構造 / 液体構造 |
Research Abstract |
結晶性高分子材料の物性は、材料内の結晶領域が占める割合によるところが大きく、結晶領域の広さに関わる複雑な結晶化メカニズムの解明は特に重要視されている。最近、高分子の結晶化誘導期の結晶化前駆現像を議論した報告が多くなされており、いくつかの構造形成モデルが提唱された。しかし、構造形成の過程をみるためには、現在の実験手法では充分な時間的・空間的分解能が得られず、結晶化前駆現象に対する確定的なモデルが得られないままである。一方、これらの現象にはナノメータースケールの分子運動が深く関連しているはずであり、結晶化に関わる詳細な分子過程を調査する上で、分子シミュレーション的な研究に期待が集まっている。 ところで、高分子は低分子と比較して1個の分子が巨大であるために、機械的な拘束を1分子に対して課すことができる(例えば延伸、架橋、薄膜への閉じ込めなど)。現在、結晶化前駆現象を拘束系で系統的に調べたシミュレーション的研究報告は殆どない。本研究の目的は、拘束条件をパラメータとして高分子の結晶化前駆現象がどのように変化するかをシミュレーション的に明らかにし、物理的に検討することである。さらに、最終的に無拘束系での結晶化前駆現象を"拘束ゼロの極限"として考え議論することである。 本年度の研究では、延伸拘束下での高分子結晶化を分子動力学シミュレーション的に初めて再現した。また、様々な温度で延伸倍率400%の配向非晶状態からの高分子結晶化シミュレーションを行い、結晶化過程の温度依存性を詳細に調査した。結果、配向非晶状態からの高分子結晶化に関して以下の知見を得た。 1.様々な温度で、結晶化を特徴付けるオーダーパラメータ(密度、セグメントの伸張度、セグメントの配向相関)が同じ時間発展を示すことを確認した。特に、結晶化前にセグメントが伸長し、その後伸びたセグメントがパッキングして結晶化するという結晶化前駆現象は、本シミュレーションの条件では確認されなかった。 2.解析の結果、結晶化の特徴的な時間の逆数τ^<-1>が温度に依存し釣鐘型の曲線となることがわかった。これは、実験的に確認される高分子結晶化速度の温度依存性と定性的に一致する結果であった。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] Akira Koyama: "Molecular dynamics simulation on polymer crystallization from an oriented amorphous state"Physical Review E. 65. 050801 (2002)
-
[Publications] Akira Koyama: "Molecular dynamics studies on polymer crystallization from a stretched amorphous state"Journal of Macromolecular Science, Part B-Physics. (In press). (2003)
-
[Publications] 小山 暁: "高分子結晶化のモレキュラー・ダイナミクス"日本ゴム協会誌. 75. 430-434 (2002)