2003 Fiscal Year Annual Research Report
光音響分光法を用いた凝縮体中の電子・格子ダイナミクスの解析
Project/Area Number |
02J01385
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岩長 祐伸 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手
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Keywords | 光音響分光法 / Pb / Rb_2CdI_4 |
Research Abstract |
本年度においては、所属機関の異動があり、研究の遂行上にやや支障があったものの、昨年度までの実験を進めて、理論的な考察を進める一方で、新たな物質にも研究対象を広げた。とくに、第一種超伝導体の金属単結晶Pb(鉛)における超伝導転移において、光音響信号の著しい増強効果を観測し、その効果の理論的な考察を行った。さらに、新しい実験対象のRb_2CdI_4結晶において、強誘電相転移によって引き起こされる光音響信号の不連続な変化を観測できたことが新たな成果である。 まず、ピエゾトランスデューサを用いたPb単結晶の光音響測定は、昨年度に短パルスレーザー光で誘起される波形測定を重点的に行った。その結果、超伝導相にのみ、早い時間領域で振動数が26MHz程度の波束が発生していることを明らかにした。それにひき続いて今年度では、光音響信号を超伝導転移温度付近でロックイン測定した結果、超伝導相において信号の顕著な増強効果を観測した。この結果を光音響波が縦波超音波として記述できると仮定して、BCS理論から導かれる信号の増強効果を算出したところ、実験結果を再現できることが明らかになった。したがって、光音響波はMHz超音波の波束として取り扱うことができることを明示的に実証したことになる。これらの結果は2003年9月に岡山大学で開かれた日本物理学会で口頭発表し、現在その結果を公刊するために論文の投稿準備中である。 つぎに、Rb_2CdI_4結晶における結果について述べる。この結晶は212Kで強誘電転移が報告されている物質で、相転移と光音響信号の相関を調べるのに適した試料と言える。そこで、光音響信号の振幅と位相をロックイン測定しながら、一定レートで温度を変化させて測定した。この測定によると、位相に213Kでとびが生じることが明らかになった。この不連続な変化は、強誘電転移に起因するものであり、これまでの誘電測定と相補的な情報を与えていると考えられる。このような相転移点近傍での光音響信号の変化を理論的に取り扱った、既存の解析結果と比較・検討することで、相転移の秩序パラメータとなっている物理量を考察した。これらの結果を2003年9月に開かれた日本物理学会(於岡山大学)において口頭発表した。
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