2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J01418
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
早瀬 篤 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | プラトン / ピレボス / 倫理学 / 古代哲学 |
Research Abstract |
今年度の研究のなかで特筆すべきことは、拙稿「『ピレボス』における純粋な快楽」において、本研究のテーマであるプラトンの対話篇『ピレボス』の解釈について、重要な進展を遂げたことである。すなわち第一に、この『ピレボス』のテクストの分析作業を通じて、ここ20年来研究をリードしてきたD.Fredeの解釈が単純な論理的推論の誤りにもとづいていることを論証し、それを完全に覆えした。このことは、対話篇の目的が、Fredeが主張するような人間の弱さにもとづく妥協的な善き生き方を描き出すことではなく、プラトンが信じる考えうる限り最善の生き方を描き出すことであることを明らかにしたという点で、極めて根本的な成果であると言える。そして第二に、複雑な議論の多層構造からなるこの対話篇において、その核心とも言える、生成する世界の中で成立する存在論的な枠組みについてプラトンが与えている説明を、かなりの程度までクリアーに抽出したことである。つまり、この対話篇においては、それぞれの生成する事物は、「生成過程」の帰結としての「生成して存在するもの」と認識され、その独自の本性を持つ、とプラトンは説明しているのである。この論文は今後の研究の骨組みとなるもので、すでに他の幾つかの解釈上の問題についても、この研究にもとづくことによって解決を与えられることが判明しており、現在論文を準備中である。これらの成果にもとづいて、従来の不十分な『ピレボス』解釈を乗り越える研究成果とまとめあげることが十分期待できる。
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Research Products
(1 results)