2002 Fiscal Year Annual Research Report
将来債権譲渡論の再検討-ドイツ包括債権譲渡論を手がかりとして
Project/Area Number |
02J01423
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤井 徳展 京都大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 将来債権 / 集合債権譲渡担保 / 債権流動化 / 特定性 / 公序良俗 / 桎梏 / 危殆化 / 詐害性 |
Research Abstract |
今年度の研究では、ドイツにおける包括債権譲渡担保に関する議論を比較法研究の対象とし、その分析を行った。とりわけ、包括的な債権譲渡担保の反良俗性の内実をドイツではどのように捉えているか、の研究が、最大の課題である。そして、ドイツにおいて包括的な債権譲渡担保が良俗違反とされる諸相及び反良俗性の内実を、次のように分析した。 1 包括的な債権譲渡担保それ自体の広範性を問題とした反良俗性は、譲渡人の経済活動の自由の侵害(桎梏)という局面で問題となる場合がある。譲渡人の桎梏は、さらに異なった観点で問題となる。譲渡人がその自由意思で他の債権者の弁済をなしうるかという観点と、過剰担保という観点である。 2 対抗要件制度が存在しないドイツでは、包括的な債権譲渡担保が設定されても、外部からは容易に認識できない。そこで第三者は、担保設定者の与信可能性について誤解し損害を被る危険がある。この危険を捉えて、第三者の利益侵害(与信可能性に関する誤解)という局面で、包括的な債権譲渡担保の反良俗性が問題となる。 3 さらに、延長された所有権留保と包括債権譲渡の競合の場面で、契約侵害という観点で包括債権譲渡の反良俗性が問題とされる。 注目するべきは、ドイツでは、反良俗性の各内実に対応して、それを基礎づけている客観的事情を除去するための予防的法技術が、いくつか考案された。そして、判例によってその妥当性が承認されている。 以上のようなドイツ法分析から得られた示唆は次のようなものである。またそれは、次年度の主要な検討課題の一つである。すなわち、包括的な債権譲渡(担保)につき、譲渡人や他の債権者の利益侵害の程度は、民法九〇条の反公序良俗性と、他の債権者の利益侵害についてはさらに、民法四二四条の詐害性によって評価し、日本固有の議論を展開していくことである。但し、ドイツでは、主に動産または債権の包括的譲渡担保の反良俗性が問題とされている。例えば、包括的な債権譲渡(真正譲渡や債権売買)における反(公序)良俗性が、ドイツの議論からは必ずしも明らかにならないことには、十分留意しなければならない。 なお、これらの研究成果を、民商法雑誌(11.研究発表を参照)にて公表することができた。
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Research Products
(2 results)