2002 Fiscal Year Annual Research Report
外国国家に対する不法行為訴訟と国際法上の裁判管轄権免除
Project/Area Number |
02J01432
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水島 朋則 京都大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 国際法 / 国際民事訴訟法 / 管轄権 / 外国国家 / 国家免除 / 主権免除 / 裁判権免除 / 不法行為 |
Research Abstract |
本研究は、外国国家に対して国内裁判所に提起された「不法行為」訴訟における裁判管轄権行使をめぐって国際法はどのような規律を行っているのかを、国家免除(主権免除・裁判権免除)の問題を中心として検討することにあるが、今年度は、関連する諸国家の実行(とりわけ裁判例)の収集・分析を主に行い、また新旧の学説の検討を通じた理論的分析にも着手した。中でも重要と思われる事例については、それらの意義と問題点をまとめて、研究会において口頭報告(3回)を行い、そこで得られた有益な批判・コメントをも参考にして、本研究の一部を論文の形で公表する機会を得た(一部は未刊)。同論文においては、「外国国家の主権行為については免除を与え、非主権行為については与えない」という「国際法規則」を適用した、名誉毀損に関する2000年英国貴族院判決(ホランド事件)を分析の出発点として、外国国家免除の問題を規律する国内制定法の下での実行とそれ以外の実行とを区別して考察を進めた。そして、そのような国内制定法の下においては、法廷地国での人的・物的損害に関しては主権・非主権行為の区別を問題とせずに免除が否定されるという規定(実行)が一般に見られることを確認した上で、そのような実行を国際法違反とみなせるような証拠を、それ以外の実行の中に見出すことができないことを指摘した。そこから、「国際法規則」であると従来一般にみなされてきた主権・非主権行為の区別が不法行為訴訟においては必ずしも当てはまらず、一部の不法行為については、主権行為の場合であっても国家免除を与える必要がない(国際法上は裁判管轄権を行使できる)と考えられることを結論として導き出した。またそれ以外の不法行為(名誉毀損・法廷地国外での不法行為)の場合の国際法規則については、なお検討の余地もあるが、今年度の研究からもホランド事件判決の問題点の一端を示すことができた。
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Research Products
(1 results)