2003 Fiscal Year Annual Research Report
姉妹染色分体合着制御機構の解明を目指した新規遺伝子の同定、解析
Project/Area Number |
02J01443
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川嵜 洋祐 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 姉妹染色分体 / 細胞周期 / 紡錘体 / M期 |
Research Abstract |
本研究では姉妹染色分体合着制御機構の解明を目的とし、そのために姉妹染色分体合着制御にかかわる新規遺伝子の同定、解析を行っている。今年度は昨年度の研究より得られた、姉妹染色分体の分離に障害を示していると考えられる変異株の中の一つ、ts858株についてより詳細な解析を行った。ts858変異原遺伝子は広く種間で保存されたタンパク質をコードしており、そのタンパク質の機能については不明であった。光学顕微鏡や電子顕微鏡による観察により、ts858株ではM期紡錘体の形態に顕著な異常がみられ、単一の紡錘体極から複数の紡錘体が形成されたものや、紡錘体極と接続していない紡錘体末端が観察された。そこで、M期紡錘体の状態を監視しているM期紡錘体チェックポイント機構とこの遺伝子の機能の関連を調べるために遺伝学的解析を行った。ts858変異遺伝子とM期紡錘体チェックポイント遺伝子mad2遺伝子欠損変異との二重変異株を作成したところ、この株は生存可能であり、制限温度下での表現型が変化した。脱凝縮した染色体が多数確認されたため、ts858株ではM期紡錘体チェックポイント機構の活性化が起きていたものと考えられる。ただし、脱凝縮した核の大多数は1核もしくは異常に近接した2核であったため、この二重変異株ではM期後期における染色体の分配移動が正常に行われていないと考えられた。これらの観察は紡錘体、および紡錘極体の運動に関係するモータータンパク質の欠損株の表現型に似ていた。電子顕微鏡による観察では紡錘極体の大きさには顕著な異常が見られなかったことや、ts858株は紡錘体の複製が行われるS期ではなく、M期に生存率が低下したことから、ts858変異株変異原因遺伝子はM期での紡錘極体分離段階特異的に重要な機能を果たしていると考えられる。
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