2003 Fiscal Year Annual Research Report
量子化学計算による軽元素近傍局所構造解析と材料開発への応用
Project/Area Number |
02J01611
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
巽 一厳 名古屋大学, 工学研究科, 助手
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Keywords | 量子化学計算 / X線吸収スペクトル / 電子線エネルギー損失スペクトル / 水素 / サイアロン / 局所構造 |
Research Abstract |
実験的手法のみからでは得ることが困難な、軽元素や固溶元素の局所的な原子・電子構造について第一原理的な計算手法を援用して知見を得ることを本研究では行ってきた。具体的には、量子化学計算と、その計算との直接的な比較が可能な分光学的実験とを、相補的に組み合わせることで以下に示す成果が得られた。 1)EELSスペクトルに見られる固体中水素の影響 これまで、研究担当者は、代表的な水素吸蔵合金である水素による化学結合変化と弾性的性質について調べてきた。分光的手法から水素の及ぼす影響についての知見を得ることで、水素吸蔵におけるメカニズムについて理解が得られ、望ましい材料形態が明らかになると期待される。本研究では、透過型電子顕微鏡内でそのような知見を得る可能性をもつ電子線エネルギー損失分光(EELS)に反映される水素の影響について基礎的な知見を得ることを目的とした。モデル実験として、金属Tiとその水素化物のEELSスペクトルを測定した。Ti L_<2.3>励起端微細構造において、水素によりスペクトルのピーク幅がサブeVのオーダーで減少していることが見出された。この変化は、量子化学計算から得られた理論スペクトルにおいても見られ、Ti同士の化学結合の弱化を示すものであることがわかった。 2)サイアロンセラミックスにおける原子配列とX線吸収分光 これまで、研究担当者は、サイアロンの溶質原子の分布・結合のプリファレンスについて第一原理計算からエネルギー的考察を行ってきた。本研究ではX線吸収分光により溶質原子周囲の局所構造について調べた。Al K吸収端微細構造において、第一ピークの位置は励起原子の局所環境を反映して化学シフトすることが確認された。構造用材料として広く使用されるβ-サイアロンのみならず、高圧相として近年合成されたスピネル型サイアロンにおいても同様の化学シフトが見られた。
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[Publications] K.Tatsumi, I.Tanaka, K.Tanaka, H.Inui.M.Yamaguchi, H.Adachi, M.Mizuno: "Elastic constants and chemical bondings of LaNi_5 and LaNi_5H_7 by first principles calculations"Journal of Physics : Condensed Matter. 15. 6549-6561 (2003)
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[Publications] I.Tanaka, K.Tatsumi, F.Oba, H.Adachi: "First-Principles Calculations of Silicon Nitrides and SiAlONs"Key Engineering Materials. 247. 149-154 (2003)