2002 Fiscal Year Annual Research Report
超臨界降着円盤モデルの理論と中間質量ブラックホールの存在証明
Project/Area Number |
02J01680
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡會 兼也 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ブラックホール / 降着円盤 / X線星 |
Research Abstract |
本研究者の研究目的は、未だ十分な研究がなされていない、超臨界降着円盤モデル(スリムディスク)の理論(特にブラックホール近傍の物理)とその観測的な検証である。 本年度は、マイクロクエーサー(GRS1915+105)のX線時間変動を説明するため、降着円盤の時間発展計算を実行し、そのスペクトルフィットからモデルの検証を行った。観測からマイクロクエーサーでは非常に高い質量降着率が示唆されるため、モデルには円盤の鉛直方向の輻射冷却の効果と移流による動径方向のエネルギー輸送を同時に取り入れた。得られた円盤構造からモデルスペクトルを作り、観測と同じ手法でフィッティングを行い、最後に実際の観測と比較した。以下に本研究による新たな知見について、理論的見地と観測的見地からまとめておく。 (理論)円盤内縁付近で熱的不安定性が発達する際、従来の幾何学的に薄い円盤から、幾何学的に厚いスリムディスクヘの状態遷移が確認された。計算領域をブラックホール近傍まで取ったことにより、定常理論の予言を数値シミュレーションにより再現した。 (観測的示唆)観測から得られた最大温度とその半径の時間変動傾向は、我々のモデル計算と一致した(円盤の温度が高いときは半径が小さくなり、温度が低いときは半径が大きくなる)。更に、モデル計算の変動の時間尺度は数秒〜数十秒となり、これは実際の観測された変動のタイムスケールとも一致した。我々はマイクロクエーサーの時間変動が降着円盤の粘性による時間尺度で決まることを理論モデルから示唆した。 このようにマイクロクエーサーの観測と理論とを定量的に比較、説明したのは我々が初めてである。 これらの成果はまとめられ、現在Astrophysical Journal誌に投稿中である。
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Research Products
(1 results)