2003 Fiscal Year Annual Research Report
超好熱菌のDNAリガーゼと本酵素が関与するDNA複製・修復機構に関する研究
Project/Area Number |
02J01714
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中谷 勝 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | DNAリガーゼ / 耐熱性 / ATP / AMP / エントロピー / エンタルピー / 熱力学 |
Research Abstract |
超好熱始原菌Thermococcus kodakaraensis KOD1由来の耐熱性ATP依存型DNAリガーゼ(Tk-Lig)に着目し、本酵素の高温環境下での触媒機構について解析を行っている。 平成14年度において発見されたAMP依存型DNAリガーゼ反応に対して、平成15年度においては、実験的および理論的に詳細な検討を行い、そのメカニズムについて解析した。 Nicked DNAの連結反応は、吸エルゴン反応である。従って、DNAリガーゼはATPをエネルギー源として利用し、反応を進める必要がある。このことは、AMP依存型の反応は熱力学的に有り得ないことを示している。 まず、反応機構について検討を行った。ATP依存型機構で見られる反応中間体をAMP依存型反応において調べたところ、全ての中間体を観察することができた。このことから、反応自体は同様の機構で進んでいることが示唆された。また、Tk-LidはATP存在下では30〜100℃の範囲で活性を示すのに対し、AMP存在下では65〜85℃の範囲でのみ活性を示した。 次に、Tk-LigのAMP依存型活性の反応機構を、熱力学的側面から検討した。基質(nicked DNA)より、生成物(sealed DNA)の方が、鎖長が長い分だけ解離変性温度は高いと考えられる。即ち、高温環境下では、基質-生成物間のエネルギー準位差が、常温とは異なる可能性が考えられた。基質および生成物のカロリメトリー解析により、56〜91℃においてはエネルギーに依存しない連結反応は熱力学的にも十分有り得る、という結果が得られた。これは、AMP活性が65〜85℃の範囲でしか観察されない事実によく符合する。 このAMP依存型DNAリガーゼ反応は、基質と生成物の相対的なエネルギー準位が反応温度によって変わることによって可能となる、従来例のない酵素反応の最初の報告であった。
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