2003 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫脱皮ホルモン受容体の大量発現、およびリガンド-受容体結合様式の解明
Project/Area Number |
02J01730
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水口 智江可 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | molting hormone / insect growth regulator / ecdysteroid / ecdysone agonist / ecdysone receptor (EcR) / ultraspiracle (USP) |
Research Abstract |
N-tert-Butyl-N,N'-dibenzoylhydrazineとその誘導体は、昆虫の脱皮ホルモン(20-hydroxyecdysone)のアゴニストであり、昆虫に投与すると早熟脱皮を誘導して死に至らしめる。これら非ステロイド型脱皮ホルモンアゴニストの標的である脱皮ホルモン受容体は、EcR(ecdysone receptor)およびUSP(ultraspiracle)という二つのタンパク質のヘテロ二量体である。興味深いことに、多くの非ステロイド型脱皮ホルモンアゴニスト類縁体は鱗翅目昆虫に対して選択的に殺虫効果を発揮することが知られているが、その選択毒性の生じる機構は明らかではない。 本年度は、鱗翅目昆虫ニカメイガおよび双翅目昆虫ショウジョウバエを供試昆虫として、in vitro転写/翻訳系による脱皮ホルモン受容体タンパク質(EcR/USP複合体)の合成を行った。さらにその受容体タンパク質を用いて種々の脱皮ホルモンアゴニストの受容体結合活性を測定し、以下のような成果を得た。 (1)ニカメイガとショウジョウバエとの間で、種々の脱皮ホルモンアゴニストの受容体結合活性を比較した。ステロイド型の脱皮ホルモン類の結合活性に対する構造活性相関は両昆虫間でよく一致していたが、非ステロイド型脱皮ホルモンアゴニストに関しては、大きな違いが認められた.また,非ステロイド型脱皮ホルモンアゴニストのショウジョウバエに対する受容体結合活性はニカメイガに対する活性に比べるとかなり低かった。この結果より、非ステロイド型脱皮ホルモンアゴニストの鱗翅目昆虫に対する選択毒性は、受容体のレベルで生じていることが示唆された。 (2)ニカメイガ、ショウジョウバエのEcR,USPを組み合わせたハイブリッド受容体を調製し、化合物の結合活性を測定した。その結果、非ステロイド型脱皮ホルモンアゴニストの受容体結合活性の大きさはEcRの構造に依存することが定量的に示された。すなわち、これらの化合物の結合部位はEcR/USP複合体のうちEcR内に存在し、結合部位との親和性が昆虫種間の選択毒性の原因となっていること、またヘテロ二量体を安定化させているUSPは選択毒性を生じさせる要因ではないことが示唆された。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] 水口智江可, 中川好秋, 宮川恒: "Validity analysis o a receptor binding assay or ecdysone agonists using cultured intact insect cells."Journal of Pesticide Science. 28. 55-57 (2003)
-
[Publications] 水口智江可, 中川好秋, 神村学, 宮川恒: "Binding affinity of nonsteroidal ecdysone agonists against the ecdysone receptor complex determines the strength of their molting hormonal activity."European Journal of Biochemistry. 270. 4095-4104 (2003)