2002 Fiscal Year Annual Research Report
炭素安定同位体を用いた植物のガス交換最適化戦略に関する研究
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02J01752
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松尾 奈緒子 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 植物-大気間の二酸化炭素・水蒸気交換 / 水利用効率 / Ci / Ca比 / 炭素安定同位対比 / 気孔コンダクタンスモデル / 光合成モデル / タイムスケール / 葉内コンダクタンス |
Research Abstract |
近年,様々な植生面上の二酸化炭素・水蒸気交換量の長期推定が重要な課題となっている.この交換過程は個葉の気孔開閉をはじめとする生理化学過程によって制御され,その種ごとの環境応答特性は細胞間隙と大気の二酸化炭素濃度比(C_i/C_a)によって評価されうることが知られている.C_i/C_aを求める手法として葉と大気二酸化炭素中の炭素安定同位体比から期間平均的なC_i/C_a(以下C_i/C_<aiso>)を求める手法と個葉の光合成・蒸散速度から瞬間的なC_i/C_a(以下C_i/C_<agas>)を求める手法が開発されてきた.そこで本研究では,これら2つの手法によるC_i/C_aを利用して個葉のガス交換制御特性の長期評価を行った,主に暖温帯性広葉樹林においてC_i/C_<aiso>を長期モニタリングし,並行して測定したC_i/C_<agas>のデータとあわせて考察した結果から,暖温帯性広葉樹のC_i/C_aは展葉直後と土壌乾燥時を除きほぼ一定であること,樹冠内で鉛直方向に変化すること,成熟した陽葉では樹種間差が小さいことを明らかにした.さらに,より簡単に入手できるC_i/C_<aiso>を用いて個葉のガス交換制御の長期特性を評価する手法を確立させるため,瞬間的なC_i/C_<agas>から個葉の二酸化炭素・水蒸気交換量同時推定モデルを用いてtime-integrated C_i/C_aを計算し,C_i/C_<aiso>との比較を行った.その結果,C_i/C_<aiso>が5〜30日間のガス交換特性を表していること,葉内二酸化炭素拡散に伴う同位体分別の影響は従来報告されているよりも小さいことを明らかにした.このようにC_i/C_<aiso>とC_i/C_<agas>の両情報を統合することにより,C_i/C_<aiso>を利用した個葉ガス交換特性の長期的評価のための手法の基礎が築かれるとともに,その意義が確認された.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 松尾奈緒子, 小杉緑子: "暖温帯性広葉樹における個葉のガス交換制御の季節変化について"日本緑化工学会誌. 28. 14-19 (2002)
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[Publications] Ohte, N., Koba, K., Sugimoto, A., Yoshikawa, K., Wong, L., Kobeya, N., Matsuo, N: "Water utilization of natural and planted trees in the semi-arid desert of Inner Mongolia, China"Ecological Application. (In press).