2003 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリウム液滴を用いた水素分子の超流動転移に関する研究
Project/Area Number |
02J01860
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久間 晋 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | ヘリウム液滴 / 量子液体 / フタロシアニン / メタン / フォノンウイング / レーザー誘起蛍光 / 高分解能分光 / 差周波レーザー |
Research Abstract |
まず初めに、昨年度までに製作した実験装置の試験として、ヘリウム液滴に捕捉したフタロシアニン分子のレーザー誘起蛍光スペクトルの測定を、ナノ秒パルスレーザーを用いて行った。その結果、0.5cm-1以下という、凝縮相中の電子遷移としては非常に狭い線幅を持った励起スペクトルを15100cm-1付近に観測することができた。この線幅は量子性媒質である超流動ヘリウム液滴に特徴的なものである。さらに励起レーザーのエネルギーを大きくすることで、超流動ヘリウムのフォノンとフタロシアニンの電子励起状態がカップルした状態であるフォノンウイングを観測した。このフォノンウイングの形状を詳細に解析することで、フタロシアニン近傍でのヘリウム原子の構造や振る舞いを議論することができる(論文投稿準備中)。 また現在、ヘリウム液滴中のメタン分子の振動回転状態の研究を行っている。メタンの振動回転スペクトルの測定に必要な波長3ミクロンの赤外光源としては、2本のCWレーザーの差周波をLiNbO3結晶中で発生させる差周波レーザーシステムを用いた。吸収強度の測定には、光子の吸収に伴うヘリウム媒質へのエネルギー緩和を利用した質量スペクトル減衰法を用いた。現在まだスペクトルは測定することができておらず、スペクトルのS/N比を向上させる必要がある。そのために質量分析計の感度を改善させなくてはならず、今後改良する予定である。なお現在測定しているメタンの振動状態はν3モードであるが、ν3モードより低い振動数をもつν4モードへのエネルギー緩和のため、スペクトルの線幅は太くなる。超流動ヘリウム液滴の高分解能媒質としての性質を生かすため、ν4モードの振動回転スペクトルも、今後測定する予定である。
|