2002 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリウム液滴を用いた水素分子の超流動転移に関する研究
Project/Area Number |
02J01860
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久間 晋 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | ヘリウム液滴 / クラスター / 位相緩和 / 高分解能分光 / 誘導ラマン散乱 / 差周波 |
Research Abstract |
ヘリウム液滴装置のノズル部分の温度をこれまで以上に下げるため、より大きい冷却能力をもつ冷凍機を取り付けた。その結果十分に低い温度(5ケルビン程度)を得ることができ、その温度領域で見られる液滴生成過程上の相転移を確認できた。一方、南カリフォルニア大のビレソフ博士らと共に、パルスノズルを用いたヘリウム液滴装置の開発を行った。これまでヘリウム液滴生成にはCWノズルが用いられてきたが、ノズルをパルス化することにより実験効率(捕捉分子の電子スペクトル上のS/N比)を100倍以上向上させることに成功した。(論文掲載済、Rev.Sci Instrum.73,3600(2002))。このパルスノズルを用い、液滴中に希ガス原子100個程度からなるクラスターを作り、その中に埋め込んだ平面分子の電子スペクトルを観測した。その結果、ある個数以上の希ガス原子クラスターでは、その中の分子の電子スペクトルが異常に広い線幅をもつことを見いだした。これはヘリウム液滴という環境中で希ガスクラスターが液状化し、埋め込まれた分子の励起状態が位相緩和を起こしたのではないかと考えられる(論文投稿準備中)。 新しい光源の開発として、固体水素結晶の誘導ラマン散乱過程を用いた波長4ミクロンの波長可変なパルス赤外光の発生に成功した。この実験で利用した固体水素中のラマン遷移の線幅は使用したパルスレーザーの線幅より十分狭いため、レーザーの分解能に従う高分解能光源として利用できる利点がある。この光源を用い気相中のメタンの振動回転スペクトルを測定した(論文掲載済、Opt.Lett.28,37(2003))。また連続赤外光として、2本のCWレーザーの差周波をLiNbO3結晶中でとることにより、波長3ミクロンの波長可変赤外光を生成することができた。今後、この光源を用いたヘリウム液滴中のメタンの高分解能振動回転スペクトルの測定を予定している。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] Mikhail N.Slipchenko: "Intence pulsed helium droplet beams"Review of Scientific Instruments. 73. 3600 (2002)
-
[Publications] Mizuho Fushitani: "Generation of infrared radiation by stimulated Raman scattering in para-hydrogen crystal at 5K"Optics Letters. 28. 37 (2003)