2004 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリウム液滴を用いた水素分子の超流動転移に関する研究
Project/Area Number |
02J01860
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久間 晋 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 極低温 / 超流動 / ヘリウム液滴 / 少数クラスター / 液体化 / 位相緩和 / 水素分子 |
Research Abstract |
極低温にあるヘリウム液滴中のマグネシウムフタロシアニン(Mg-Pc)分子の周りに、10個程度のアルゴン原子からなるクラスターを生成したときに、Mg-Pc分子のレーザー誘起蛍光(LIF)スペクトルの線幅が異常に広がることを観測した。昨年度まで、フタロシアニン分子とその周りの希ガス原子クラスターについて、同様の現象を観測しており、この現象は中心の分子種によらない、ファンデルワールスクラスターに共通の性質であると結論づけられた。過去に、10個程度の原子からなる少数クラスターが、低温でも液体として存在しうる可能性があることが理論的に示されている。また気相においては、少数クラスターの液体化によると考えられるスペクトルの線幅の広がりが、実験的に観測されている。液体クラスターに囲まれているため中心分子の位相緩和が速くなり、その結果として線幅が広がるのである。われわれが得た今回の結果は、0.4ケルビン以下という極低温のヘリウム液滴媒質中でも、少数クラスターの液体化が起こったことを示唆している。このことはヘリウム媒質の相互作用が非常に小さいこと、またさらに、ヘリウム液滴が超流動状態にあることから何らかの新しい効果がクラスターに作用していることを示すものである。 さらに水素分子クラスターの場合には、LIFスペクトルの線幅の広がりに、液体クラスターとしての性質の変化を示す興味深い特徴が見られた。クラスターが大きくなるほど広がっていた線幅が、あるクラスターサイズでは逆に狭くなり始めた。そのサイズは、中心分子をひと回り取り囲むサイズの水素分子クラスターに対応している。このことは、過去の理論研究が示すように、適当なサイズのクラスターとして存在することで、水素分子が超流動転移を起こした可能性を示すものである。
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Research Products
(1 results)